ホーム >  症状別病気解説 >  山登りで起こりうる高山病にご用心
中高年を中心に依然として人気がある山登り。幅広い年齢で多くの人が楽しめますが、高所でのさまざまな体調の変化には注意が必要です。正しい知識を携えて、安心で安全な山登りを楽しみましょう。

高山病ってどんな病気?

高い山に登ったときに起こる症状をまとめて、高山病と呼んでいます。標高が高くなると大気圧が低下して、酸素の濃度が薄くなります。高山病の症状は、平地に比べて身体の中に取り込む酸素の量が低下し、体内の酸素が不足することで起こります。

地上と山頂の気圧
高山病のメカニズム

個人差はありますが、標高が2000~2500mを超えると、高山病になる可能性があります。日本国内でいえば、富士山や南アルプス、北アルプスなどの山が3000m級なので、特に注意が必要です。ただし、低い標高でも高山病を起こす人はいます。標高だけに注意するのではなく、自分の体調と相談しながら登山を楽しむようにしましょう。

高山病では第一に頭痛が起こります。そのほかの症状は、吐き気や嘔吐などの消化器症状、疲労やめまい、泊まりがけで登山する場合は、眠れなくなる睡眠障害などです。評価基準として、レイクルイーズスコア(高山病の経過判定表)があります。それぞれの症状の重症度によって、点数をつけて評価するもので、すべての点数の合計が4点以上の場合は要注意です。その地点よりも標高が高い場所には行かないようにしましょう。可能であれば、登山の際はこのスコアを携帯し、自分で自分の状態が評価できるようにしてください。

本人評価項目

症状 点数 程度
1 頭痛 0
1
2
3
なし
軽度
中程度
何もできないくらい激しい
2 消化器症状 0
1
2
3
なし
食欲低下
吐き気、または吐く
何もできないくらいの吐き気と嘔吐
3 疲れ・脱力感 0
1
2
3
なし
軽度
中程度
何もできないくらいひどい
4 めまい・立ちくらみ 0
1
2
3
なし
軽度
中程度
何もできないくらいひどい
5 睡眠 0
1
2
3
よく眠れる
普段より寝苦しい
寝苦しく何度も起きる
全く眠れない

※頭痛があり、1~5の合計点数が4点以上だとそれ以上の登山は危険と判断されます

他者による評価項目

症状 点数 程度
6 精神状態 0
1
2
3
正常
ウトウトしている・疲れ切っている
場所や時間が分からない程度混乱している
ほとんど反応がなく失神状態に近い
7 運動失調 0
1
2
3
4
正常
両手を広げて歩ける
まっすぐ歩けない
転ぶ
立ち上がれない
8 むくみ 0
1
2
なし
1カ所
2カ所

※高所に数日以上滞在する際に毎朝、もしくは朝晩にチェックし、6~8の合計点数が増えていると要注意です

高山病になりやすい人

高山病になるかどうかは、遺伝的要因や、登山する日のコンディション、気候など、さまざまな要因によって決まるので、どんな人でも可能性はあります。ただし、高齢者は肉体の衰えで肺活量が減少し、動脈硬化も進んでいるため、健常な人に比べて登山自体が身体に大きな負担をかけることになります。したがって、若者に比べて高齢者は高山病になりやすいといえます。

また、高山病の重症型として「高所脳浮腫」「高所肺水腫」があります。高所に行って低酸素状態にさらされることで身体にさまざまな反応が起き、脳の血管から水がしみ出すことで起こるのが脳浮腫です。肺でも同様の現象が起こり、肺に水がしみ出すことで高所肺水腫が起こります。高所肺水腫については特に遺伝的要因が強く、高山病の症状がなくても起こる可能性があることが分かっています。

予防のポイント

個人の体質によって症状や起こる標高などがさまざまなので、対策が難しいですが、一般的に下記の点に注意しましょう。

ポイント1

水分をたくさん摂取する

脱水によって高山病になりやすくなることが分かっています。特に登山では身体に負担がかかるため、知らない間に汗をかいていたり、呼吸が荒くなることで呼気から水分が失われている場合があります。こまめに水分補給をし、脱水にならないように気を付けましょう。

ポイント2

自分のペースでゆっくり登る

酸素濃度が薄くなり、身体にうまく酸素を取り込めなくなることで高山病は起こるため、急激に高い所まで登ると、より一層起こりやすくなります。ゆっくり登ることで、身体が環境に適応できるように自然と調整できるので、その標高の酸素濃度に対応することができます。

ポイント3

アルコールを控える

頭痛、消化器症状、めまいなど、高山病の主要な症状は、アルコールを摂取したときに起こる二日酔いの症状にとても似ています。アルコールを摂取した場合、脱水などによって高山病を悪化させてしまう可能性があるため、登山前日は控えるようにしましょう。


もし高山病になったら

まずなんといっても、それ以上登らないことが大事です。同じ高度に留まることで、身体がその環境に対応できるように調節してくれます。また、水分をしっかりと摂取することも大切です。それでも症状が治まらない場合には、下山することも考えなければいけません。ただし、ここで大切なのは、1人で下山しないことです。万全ではない状態で下山をするのは、危険が伴います。必ず誰かに付き添ってもらいましょう。まわりの人に迷惑をかけたり、自分が1人だけ遅れることには誰しも不安を覚えます。しかし、無理をすることでそれ以上の迷惑をかけてしまう可能性があるので、しっかりと自分の状態を判断し、状態が悪ければ同行者に言うようにしましょう。

山で注意すべき病気
山に登って起こる症状は高山病だけではありません。頂上が近い場合などには特に「あと少しだから頑張れる」と自分の状態を過大評価しがちです。高山病以外にも下記の病気や状態に注意し、問題があれば同行者に進言して対策をとるようにしましょう。

病名・状態 病歴 症状
疲労困憊 発症前の激しい運動 体調不良、気分消沈、頭痛など
脱水症 高温の気候、水分摂取不足、下痢、嘔吐 口の渇き、気分消沈、頭痛、尿の排泄量の低下、発熱など
熱中症(熱疲労) 高温の気候、水分摂取不足、体調不良 頭痛、疲労、ふらつき、嘔吐、吐き気、脈が速いなど
熱中症(熱射病) 熱疲労の重症型

深部体温上昇、脳機能障害による意識混濁、譫妄(せんもう)状態、意識喪失、肝臓機能障害、腎臓機能障害、血液凝固障害など

※譫妄(せんもう): 外界からの刺激に対する反応が鈍り、錯覚・妄想・麻痺などを起こす意識障害

低血糖 糖尿病治療薬使用中 空腹、吐き気、嘔吐、脈が速い、落ち着きがない、発汗、ふらつき、意識消失など
二日酔い アルコールの摂取 頭痛、疲労感、吐き気など


上小牧 憲寛

解説:上小牧 憲寛
栃木県済生会宇都宮病院
救急科医長

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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