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硬膜動静脈瘻
(こうまくどうじょうみゃくろう)

Dural Arteriovenous Fistula

解説:稲葉 真 (済生会横浜市東部病院 脳神経外科・脳血管内治療科部長)

硬膜動静脈瘻はこんな病気

脳は、頭蓋骨の内側で硬膜という厚い膜に包まれています。この硬膜の動脈と静脈が直接つながってしまう血管異常を硬膜動静脈瘻といいます。通常心臓から送り出された血液は、動脈を通り毛細血管につながっている組織に栄養を与えた後、静脈を通って心臓に戻ります。硬膜動静脈瘻の病変部には毛細血管がなく、動脈血がつながった穴(これを瘻、もしくはシャントといいます)を通って一気に静脈に流れ込んでしまいます。そのため、つながってしまった部位の静脈の圧力が上がり、正常な静脈の流れがせき止められたり、さらには逆流したりすることもあります。これを静脈還流障害といいます。

脳や眼からの静脈血も硬膜の静脈を経由して心臓に戻るので、静脈還流障害をきたせば、脳や眼に障害が起こることがあります。症状として、脳では頭痛やけいれん、障害部位によっては麻痺やしびれ、言語障害、認知症などが起こります。逆流がひどいと脳出血やくも膜下出血を引き起こし、意識障害となります。場合によっては、生命に関わることもあります。眼の症状は充血、痛み、眼球突出、眼球運動障害、視力障害などです。

硬膜動静脈瘻の治療法

自然治癒することもあるため、無症状のものは経過観察することもありますが、脳や眼に静脈血が逆流するなどの症状が見られた場合は治療の対象になります。
治療方法は3つあり、通常は脳血管内治療が主体となります。この治療だけで治すことが困難な場合は、開頭手術や定位放射線治療を組み合わせることがあります。また、まれに開頭手術だけで治るものもあります。

1)脳血管内治療
足の付け根の血管からカテーテルという細い管を入れ、異常血管の近くまで送ります。ここから血管の中に、塞栓物質といわれる液体や粒子を流す、あるいはコイルという金属の糸を充填して、シャントの部分を閉塞します。
2)開頭手術
皮膚を切開したあと頭蓋骨を外し、露出した異常血管を切断します。
3)定位放射線治療(ガンマナイフ、サイバーナイフ)
病変部に放射線を集中照射し、空いてしまった穴を閉塞します。開頭する必要がないため体にかかる負担は小さくなりますが、閉塞まで1年以上かかることが多いです。

早期発見のポイント

日本人では、硬膜動静脈瘻は脳の海綿静脈洞という箇所に最も多く発生します。ここは脳の底面である頭蓋底の中心で、眼から静脈血が流れ込んでいます。中高年の女性に多く発生し、場合によっては眼に静脈血が逆流して以下のような症状が現れます。

  • 片側、あるいは両側の眼が充血してむくむ(眼球結膜充血、浮腫)
  • 眼が軽く飛び出る(眼球突出)
  • 眼の痛み、頭痛を感じる
  • 眼の動きが悪くなり(眼球運動障害)、物が二重に見える(複視)
  • 眼の見え方が悪くなる(視力低下)

急性緑内障発作でも似たような症状が見られるので、気になったときは眼科、脳神経外科の両方を受診しましょう。

日本人の間で次に多く硬膜動静脈瘻が発生する箇所は横静脈洞、そしてS状静脈洞と呼ばれるところです。この箇所は耳の後ろ側にあるため、硬膜動静脈瘻が生じると、拍動性(心臓の拍動にあわせてザーザーと音が聞こえる)の耳鳴りがすることがあります。このような症状があるときは硬膜動静脈瘻も疑い、耳鼻咽喉科だけでなく脳神経外科も受診しましょう。

予防の基礎知識

中高年に発生することが多いですが、年間発生率は100万人に3人程度と珍しい病気です。頭のけがや手術、静脈の閉塞、感染などの後天的なものが原因と考えられています。しかしまだはっきりしたことは分からず、ほとんどが原因不明で発症するため、この病気を予防する方法は今のところありません。発症した場合は経過を観察し、脳や眼に静脈血が逆流するなどの症状が見られた場合は「医学解説」で述べた治療を行っていきます。

稲葉 真

解説:稲葉 真
済生会横浜市東部病院
脳神経外科・脳血管内治療科部長

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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