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腸腰筋膿瘍(ちょうようきんのうよう)

Iliopsoas Abscess

解説:吉村 佳子 (中和病院 放射線科部長)

腸腰筋膿瘍はこんな病気

腸腰筋膿瘍とは、腸腰筋に生じる膿瘍(のうよう)のことです。
腸腰筋とは腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉群で、太ももを持ち上げる働きをしています。そして、膿瘍とは限られたスペース内に膿が充満している状態のことで、腸腰筋に膿瘍が生じるとさまざまな症状がみられます。
腸腰筋膿瘍が発病しやすい年齢は中高年以降です。適切な治療がなされれば比較的予後は良好ですが、高齢者や糖尿病肝硬変、腎不全などの基礎疾患が重篤な場合は死亡することもあります。

腸腰筋の位置とその周囲の名称
腸腰筋の位置とその周囲の名称

腸腰筋膿瘍の症状と原因

背中が痛い、腰が痛い、発熱や全身倦怠感、歩行時の疼痛(とうつう/痛み)などの症状がありますが、特徴的なものはみられません。

腸腰筋膿瘍が生じる背景には、栄養状態の不良、糖尿病やステロイド使用による合併があります。また、他の疾患から続いて起こることもあります。主に、腸腰筋に近い臓器の炎症で、脊椎カリエスや椎骨骨髄炎などの筋骨格感染症、虫垂炎、憩室炎、クローン病といった消化器疾患、尿路感染症などです。起因菌としては、大腸菌、結核菌、嫌気性菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などが挙げられます。

腸腰筋膿瘍の診断

血液検査で炎症反応がみられるものの、単純X線撮影などでは発見が難しく、MRI検査や造影CT検査によって初めて発見・診断されます。

腸腰筋膿瘍の治療法

「安静」「抗菌薬の投与」「ドレナージ」です。
ドレナージとは、溜まった膿を取り除く処置のことです。ドレナージには二つの役割があり、一つは原因となっている細菌を見極め、効果的な抗菌薬を決定するのに必要です。もう一つは、膿瘍自体を減らす役割です。
ドレナージの方法は、局所麻酔下で超音波やCTを用いて皮膚から膿瘍に向けて針を穿刺(せんし/針を刺し、体内の液体を採取すること)します。穿刺したあとは、膿瘍から皮膚外へのチューブを留置します。膿が出てこなくなるまで留置し、同時に抗菌薬治療を続けます。しかし、原因疾患による全身状態悪化のため死亡に至ることもあります。

早期発見のポイント

なかなか早期発見することは難しい疾患です。ただし、腸腰筋膿瘍では発熱や全身倦怠感が続いているときに、足を挙げたり歩行したりすると、太ももに痛みを感じます。このような症状がみられた場合には、すぐに病院を受診しましょう。

予防の基礎知識

糖尿病肝硬変などの基礎疾患を良好にコントロールすることや、栄養状態を良好に保つことが一番の予防になります。発熱が続き、尿に膿が含まれている場合は尿路感染症の可能性もありますが、そのような状況で放っておくと脊椎や腸腰筋に細菌がばらまかれ、結果、腸腰筋膿瘍や化膿性脊椎炎が生じることもあります。そのため、日頃から尿の色や性状を観察することも大切です。

池本 英司

解説:吉村 佳子
中和病院
放射線科部長

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