社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2017.02.03

足底腱膜炎(そくていけんまくえん)

plantar fasciitis

解説:黒川 正夫 (大阪府済生会吹田病院 院長)

足底腱膜炎はこんな病気

足の裏には、かかとの骨から足の指の付け根をつなぐ線維が、扇状の膜のように広がっています。これが足底腱膜です。アーチ状になった足の「土踏まず」を支える重要な役割を果たします。

マラソンやハイキング、長時間の立ち仕事などで土踏まずに過度な負担がかかると、足底腱膜がかかとの付近に引き伸ばされる力が繰り返しかかることになります。この時に、腱膜に炎症や目に見えない傷を生ずると考えられます。マラソンなどの長距離走で、特にアスファルト舗装をされた硬い道を走っているとこの病気になりやすいです。最近のジョギングやマラソンブームで患者は増えているとみられますが、スポーツをしない一般の人でも中高年には比較的多く生じ、足底の痛みのうち約1割が足底腱膜炎とするデータもあります。

足底腱膜解剖
足底腱膜解剖

足底腱膜炎の治療法

治療の基本は足の裏にかかるストレスを減らすことですので、運動はしばらく休むか、運動量を減らし、硬いアスファルトを避け土や芝生の上を走るなどの工夫も必要でしょう。
また炎症をおさえるために、足の裏に均等に力がかかるように靴の中に土踏まずの部分が盛り上がった中敷き(アーチサポートといいます)を入れ、痛み止めの薬(抗炎症剤)を服用していただくこともあります。多くの場合、数カ月以内で痛みが和らぎますが、痛みが強い時にはステロイドやヒアルロン酸を使った局所注射を行なう場合もあります。手術は現在ではあまり行なわれません。

近年は、一部の病院で「体外衝撃波疼痛治療装置」という医療機器が導入されています。これは痛みが半年以上続く難治性(治りにくい)足底腱膜炎の患者さんを対象に、超音波やMRIで炎症のある腱膜の状態や位置を確認した後、患部に衝撃波をあてる新しい治療法です。衝撃波が足底腱膜の血流を改善し、修復を促すことで、痛みの軽減に効果を発揮すると考えられています。

体外衝撃波疼痛治療装置を使用した治療の様子
体外衝撃波疼痛治療装置を使用した治療の様子

済生会吹田病院では3年前からこの装置を使った治療を行ない、難治性足底腱膜炎の患者さんに使用しています。効果には個人差がありますが、治療した70%の方に痛みの軽減が得られ、28%は完全に痛みが消失しました。痛みが残る方もいましたが、多くは当初の痛みの半分以下に改善しました。スポーツをしている方では約80%が元の競技に復帰しています。

早期発見のポイント

主に足底腱膜が付着する踵骨(かかとの骨)付近に衝撃(ストレス)が集中するため、かかとの少し内側を指で押すと、針を刺したような痛みが走ります。朝起きた時に踏み出した一歩が、かかとをつけないほど痛い時は足底腱膜炎の可能性が高いです。特に高齢になるほど腱膜が硬くなる(弾力性がなくなる)ため、炎症や痛みを発症しやすくなります。重症の場合、歩行が困難になるケースもありますので、上記のような症状が出た時は受診をおすすめします。

予防の基礎知識

運動を行なうときのスポーツシューズは軽くて薄い靴よりも、クッションが入ったものが良いでしょう。必ず行なうべきことはストレッチ運動で、足のつま先をそらす、アキレス腱やふくらはぎを伸ばすことが必要です。またタオルを足の指で手繰り寄せるような運動(タオルギャザー)や柔らかいテニスボールなどを土踏まずの部分でころがすなどの足底筋を鍛える運動も効果があると思います。また、足の筋肉や腱膜が硬くなることを防ぐために、お風呂で十分温め、マッサージすることもよいでしょう。日ごろからかかとを浮かせてつま先で歩く癖を付けたり、ランニングで足を着地する時にかかとからではなく、つま先から着地するように心がけると、足底筋が鍛えられ、腱膜にかかる負担を軽減させ、炎症を防ぐことにもつながります。

ストレッチ運動
ストレッチ運動

黒川 正夫

解説:黒川 正夫
大阪府済生会吹田病院
院長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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