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睡眠時無呼吸症候群

Sleep Apnea Syndrome

解説:上森 栄和 (奈良病院 睡眠呼吸障害センター センター長)

睡眠時無呼吸症候群はこんな病気

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が何度も止まる無呼吸と、呼吸が止まりかける低呼吸とを繰り返す病気です。英語の「Sleep Apnea Syndrome」の頭文字から「SAS」と略されています。通常、睡眠時無呼吸症候群といえば、最も頻度の高い「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstractive Sleep Apnea Syndrome:OSAS)」を指します。日本での潜在患者数は、人口の2~3%(約250万人)ともいわれています。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、空気の通り道である気道が狭くなったり、完全にふさがってしまうことで起こります。その原因としては、肥満や扁桃腺肥大、顔面形態上の問題などがあります。空気の通り道である気道の内腔は1.5㎝ほどしかなく、特に、肥満により上気道(鼻や喉など)が圧迫されて狭くなり、無呼吸・低呼吸を発症しやすくなります。
また日本人は、骨格上あごが小さく、舌が収まるスペースや気道が狭いため、肥満でなくとも無呼吸・低呼吸を起こしやすいといわれています。

睡眠時無呼吸症候群が引き起こす身体への悪影響

無呼吸が継続すると、生命維持に不可欠な酸素を得ることができなくなります(低酸素状態)。すると、当然眠っていた脳は苦しくなって眠りから覚め(覚醒)、呼吸を再開させます。しかし、しばらくすると睡眠状態になり、再び無呼吸が出現します。SASの患者さんは、このように一晩中「睡眠→無呼吸→覚醒→睡眠」を繰り返すことになり、質のよい睡眠をとることができなくなります。これらの現象は、患者さん自身には自覚症状がありません。
さらに、眠っている間に低酸素状態を繰り返すことで、すべての臓器が悪影響を受けることになります。特に、循環器系には影響が大きく、高血圧、虚血性心疾患、脳血管疾患などを合併し、重症であれば生命予後を悪化させることが分かっています。

早期発見のポイント

睡眠時無呼吸症候群が疑われる症状は、以下の通りです。
これらの症状を見過ごさないことが、早期発見につながります。

1 大きく不規則なイビキ
睡眠中に空気の通り道である上気道(鼻や喉など)が狭くなると大きなイビキをかき、上気道が閉塞すると無呼吸が引き起こされます。
2 昼間の眠気、熟眠感の欠如
睡眠中の無呼吸や低呼吸のため、眠っているはずの脳は何度も目覚めている状態となります。睡眠の分断が起こり、日中の眠気を伴うようになります。
3 起床時の頭痛
4 集中力の低下、疲労感、倦怠感
5 夜間に何度も目が覚める

次に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の原因となりやすい要因を挙げます。

1 肥満(体重増加)
気道を取り巻く軟部組織の増加により、上気道が狭くなり、それが閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)のリスクになってしまいます。
2 骨格
あごが小さい日本人は、気道が狭くなりやすい傾向にあります。そのため、日本人では肥満とはいえない程度の体重増加でも、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を発症する可能性があります。また、首の短い人や、扁桃腺の大きな人も発症する場合があります。
3 鼻閉(鼻づまり)
慢性副鼻腔炎アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう/鼻を左右に分けている真ん中のしきりが曲がる病気)などによる鼻づまり。
4 アルコール摂取
アルコールを飲んで睡眠をとると、上気道を広げる筋肉が緩んだり、鼻や咽頭の通気が悪化します。そのため、上気道が閉塞して睡眠中に呼吸が止まりやすくなります。特に、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは無呼吸の時間が長くなりやすく、少量のアルコール摂取であっても無呼吸の回数は増加します。

診断のための検査方法

医療機関を受診し、問診などで睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、まず、自宅での検査も可能な簡易型装置によるスクリーニング検査が行われます。しかし、睡眠時無呼吸症候群の原因や重症度を調べたり、治療方法や処方を決定するためには専門的な精密検査が必要です。精密検査としては、一晩入院し、さまざまなセンサーを身体に取り付けて眠り、その睡眠状態を調べる「ポリソムノグラフイー(PSG)」という検査を行います。この検査で無呼吸の回数や程度、睡眠の質(眠りの深さなど)、睡眠中の行動異常、不整脈などを評価し、総合的に診断します。決して痛みや電気刺激を伴う検査ではありません。

予防の基礎知識

睡眠時無呼吸症候群の予防としては、「生活習慣の改善」「睡眠体位の工夫」「鼻閉(鼻づまり)の治療」が挙げられます。

生活習慣の改善

生活習慣のなかには、睡眠時無呼吸症候群を悪化させるものがあります。生活習慣を変えるだけで、睡眠時の無呼吸が減ったり、あるいは無呼吸が無くなってしまう人もいます。
・肥満の改善 
肥満は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の最も重要な危険因子です。減量は肥満を伴う患者さんで、まず最初に取り組くむべき治療の一つです。
・アルコールや睡眠薬の制限 
アルコールや睡眠薬は無呼吸を悪化させることがあり、制限することが望ましいと考えられています。

睡眠体位の工夫

・側臥位(横向きに寝る)睡眠
寝るときの身体の向きも大切です。仰向けに寝ると、睡眠中に重力により舌がのどの奥に落ちやすくなってしまい、上気道(鼻や喉など)をふさいで無呼吸が悪化する傾向があります。それを簡単に防ぐ方法が、横向きに寝ることです。

鼻閉(鼻づまり)の治療

・鼻閉の治療
鼻閉は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を悪化させるため、アレルギー性鼻炎や花粉症が現れる時期には耳鼻科に行って治療してもらうことが必要です。

睡眠時無呼吸症候群は、重症度や患者さんの症状に応じた治療が必要になります。これらはあくまでも予防策として考え、もし睡眠時の無呼吸や大きなイビキなどを家族に指摘された場合などは、早めに受診して適切な治療を行ってください。

重症睡眠時無呼吸症候群の標準的治療(CPAP療法)

CPAP療法の原理は、寝ている間の無呼吸を防ぐために、気道に空気を送り続けて気道を開かせておくというもので、唯一、生命予後を含む有効性が証明されている標準的治療です。具体的には、眠るときに酸素マスクのようなものを鼻に当て、小型の装置から送り込まれる「空気の圧力」によって気道を広げます。

上森 栄和

解説:上森 栄和
奈良病院
睡眠呼吸障害センター センター長

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