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2015.03.09

3・11 東日本大震災から4年、100歳の里帰り


 

東日本大震災の後、山形県の特別養護老人ホーム愛日荘に避難された方の中に、一人のおばあちゃんがいます。 震災当時97歳の宮城県石巻市の髙橋初恵さんです。現在、100歳です。

初恵さんは、石巻市の老人ホームにいるときに被災されました。ご長男夫婦も石巻に住んでいましたが、津波に流され帰らぬ人となってしまいました。

この時、初恵さんは、既に認知症を患っていたため、なぜ自分が山形にいるのか理解できません。一日に何度も「石巻に帰りたいの、連れて行って! お願いだから~!」と涙ながらに訴えます。でも、実家も流されてしまい、帰っても瓦礫の山しかありません。「戻ってもショックを受けるかもしれない」と周囲は話をそらすようにしていました。

昨年の8月、ようやく、初恵さんの帰省がかないました。宮城県仙台市に住む次男夫婦と職員がもう一度故郷を見せてあげたいと話し合い一時帰省を決断、共に施設のリフトバスで愛日荘を出発しました。石巻まで120km、片道3時間半もの長旅ですが、初恵さんは疲れる様子もありませんでした。

愛日荘には海はありません。石巻に近づくと潮の香りが強くなります。初恵さんは、潮風をうけ、懐かしい街並みや商店街を安堵の表情で眺めていました。23年前に亡くなられたご主人が働いていた建物が近くに見えると「毎日お弁当を届けたの」と思い出深げに語っていました。

今、初恵さんは、終末期ケアを受けています。おそらく石巻には帰れず、施設で看取ることになります。
「帰りたいの~」。訴えは今でも続いています。でも「また行こうね」と答えると、興奮から落ち着くのも早くなりました。

済生記者 髙橋 睦

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