なでしこナースのストーリー

最期をありがとう

最期をありがとう

私は2年前、長く勤めた病院から特別養護老人ホームに異動しました。キャリアの最後は、あまり時間に追われない施設で働いてもいいかな、と思う気持ちはありましたが、いざ“主戦場”から離れるとなると、寂しい気持ちが湧いてきたのも事実です。しかし、特養に来て、これまでとは違う「看取り」に出合いました。

病院は最後の最後まで命を救うことに全力を傾けるのが使命です。付き添いのご家族とじっくり話して、支えてあげたいと思う気持ちがあっても、その患者さんの看護業務に、さらには別の患者さんの看護に向かわなければならないなどで、十分、お聞きできないこともありました。特にその患者さんが亡くなられた後は、ご家族の気持ちに寄り添えた看護ができたのだろうか、と考えることがありました。

でもここでは、ご家族と一緒に利用者さんにとって最善の逝き方を考えることができました。看護師として医療の知識を伝え、そのうえでご家族がどのように送りたいのか、十分、お話をうかがうことが出来たのです。

病院でお亡くなりになった時は、医師はその場にいます。ここでは、呼んでもすぐには来られないときもあります。死亡確認まで1、2時間だったと思います。個室の枕もとでご家族と過ごしました。思い出に耳を傾け、一緒に外の景色を眺めたりもしました。空がきれいでした。何か私も家族になったような気がしました。

後日、家族の方から、
「最期の時を大事にしてくれてありがとう」
と、お礼の言葉をいただきました。

病院とは違う看護のかたちがあるのだなあと、今、思っています。

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