なでしこナースのストーリー

鬼の目に涙

新人ナースの頃、患者さんに満足していただける看護技術を持ち合わせていない自分自身がふがいなく、
気持ちが沈むことがありました。
あるとき訪室した際、「朝、あなたの顔を見るとほっとするよ」と患者さんから声をかけられました。
その一言に救われたことを覚えています。

突然の心肺停止から蘇生できたのに、何日も意識が戻らなかった患者さんがいました。
婦長さんは「脳波は音に反応を示しているのだから、しっかり声をかけて看護しよう」と、
私たちを励まし気持ちを奮い立たせてくれました。
その患者さんが「瞬(まばた)き」で意思表示をしているとわかって、婦長さんは大粒の涙を流しました。
私はつい、「鬼の目にも涙ですね」と言ってしまいました。
一緒にいたスタッフみんなが、泣きながら大笑いしたのでした。

あれから二十数年がたち、私は「師長さん」と呼ばれています。
新人の頃は、自分自身が患者さんに良い看護を提供したいと思っていました。
しかし、経験を積み重ねる中で、チームとして看護を提供する喜びを知りました。

業務に追われ、息つく間もない日々だけれど、あの時の「婦長さん」のように、
看護する喜びをスタッフと分かちあえる瞬間を探して、今日も全力疾走しています。

なでしこナースのストーリー 一覧へもどる