1-全体編 法人活動編
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25会長と理事長部を支部長に移譲して責任も明確化した。また、支部理事会は支部長の諮問機関と位置付け、法人全体の運営責任は理事会・評議員会に統合した。病院院長と支部長の兼職禁止、支部長、病院長、福祉施設長などの適格性を審議する人事委員会の設置など、済生会が昭和27年、財団法人から社会福祉法人となって以来の大改革だった。 この組織改革は済生会の内部事情に加え、平成25年ごろ、政府の規制改革推進会議で社会福祉法人への風当たりが強まったことも背景にある。税制面で優遇される社会福祉法人の利益の内部留保が過大というもので、民間シンクタンクの研究員は経済紙に幾度も批判を寄稿。一般紙は社会福祉法人が相続税対策に使われているなど年間を通してネガティブ・キャンペーンを展開した。 こうした批判は一部の法人では確かに当たっていたが、済生会は日本最大の社会福祉法人であり、その代表的存在として風当たりが強まっていた。炭谷理事長はこうした風潮に正面から対抗した。全国老人福祉施設協議会のシンポジウムでは、この研究員と論戦を交わし、本部の松原了理事も規制改革推進会議のメンバーが座長を務めるシンポジウムに参加。「なでしこプラン」など済生会の社会貢献活動を訴えた。この流れを受けた改正社会福祉法は平成29年4月施行されたが、ほぼ本会の主張に沿う内容となっていた。ソーシャルインクルージョンへ 平成29年2月には済生会保健・医療・福祉総合研究所(済生会総研)がオープンした。所長は炭谷理事長が兼任し、「研究のための研究ではなく、済生会の運営に資するものでなければならない」と研究内容の方向性を明確に打ち出した。炭谷理事長は「異色の官僚」と言われたが、その中には「学究肌の官僚」との意味も含まれている。厚生省時代は学問することが好きで、「官僚の仕事である実務は理論と常に表裏一体でなければならない」との持論を実践した。総研の方向性もその持論に基づくものだった。 その「実務と理論」でいえば、炭谷理事長が済生会で打ち出した施策には、常に世界に通ずる理論が横たわっている。生活困窮者支援事業「なでしこプラン」は、まぎれもなくソーシャルインクルージョンの実践形だ。社会的責任(SR)を明記し平成25年度まで公表を続け

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