社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2021.02.01

西川 美和 さん

西川 美和 さん

役所広司さんの俳優としての姿勢に感動。
「毎日が幸福な現場でした」

一貫してオリジナルにこだわってきた映画監督・西川美和さんが、初めて原案のある作品に挑戦。原案小説にあるものすべてを自分の血や肉にするために5年もの長い歳月をかけて生み出した新作映画への思い、そして、憧れの俳優・役所広司さんを主役に迎えた喜びについて伺いました。

脚本に3年かけただけあって、オリジナル作品を撮るのと感覚の違いはなかったそう。

「ただし主人公は世間には滅多めったにいないほどのまっすぐな人間。私がこれまで描いてきた、ずるくて嘘つきな人物たちよりむしろ演出のポイントは難しかったです。しかし、それも役所広司さんをキャスティングしたことで迷いは生まれませんでした」

役所さんは、実は監督が17歳から恋焦がれてきた憧れの存在。目の前で芝居を見た感想を尋ねると、次のように答えてくれた。

「まさにパーフェクトですよ。『生まれたときから、その人でしかなかったんじゃないか?』と思いますし、書かれた台詞せりふ通りにしか言われないのに、当人の実感としてその言葉がふと出てきているように聞こえてしまう。主演だけれど現場で目立つ振る舞いもせず、映画づくりの歯車の一つという姿勢でスタッフにも優しく、いつも粛々と準備をされている。カメラ脇でその地力と姿勢を見ながら感動していました。毎日が幸福な現場でした」

ちなみに執筆の際は、没頭するため広島の実家で行なうことも多いとか。

「この年でお恥ずかしい話ですが、24時間そのことだけを考えていないと書けないので、70代の母に食事をつくらせ、洗濯をさせ。それでも煮詰まるとスポーツを観ます。勝負には筋書きがなく、映画から遠い分、頭が空っぽになるんです。土地柄、野球はカープびいきです()

文:みやじまなおみ 写真:安友康博(機関誌「済生」20212月)

『すばらしき世界』

『すばらしき世界』©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

下町の片隅で暮らす短気ですぐカッとなる三上は、強面こわもての見た目に反して優しくて真っ直ぐすぎて困っている人を放っておけない男。しかし彼は、人生の大半を刑務所で過ごした元殺人犯だった。何とか再生しようと悪戦苦闘する三上に若手テレビマンがすり寄り、ネタにしようと目論むが、三上の過去と今を追ううちに思いもよらないものを目撃していく。

●脚本・監督:西川美和
●原案:佐木隆三『身分帳』(講談社文庫刊)
●出演:役所広司、仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美 ほか
●配給:ワーナー・ブラザース映画

2021年211(木・祝)全国公開

西川 美和 さん


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