社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

薬剤師が教える薬のキホン

2022.04.08

Vol.02

便利に使おう、お薬手帳

『今どんなお薬を飲んでいますか?』『お薬手帳はお持ちでしょうか?』
病院や薬局に行くと必ず尋ねられる言葉だと思います。長い薬名や服用回数を全部覚えておくのはなかなか難しいものです。そこで活用すると便利なのが「お薬手帳」です。

お薬手帳ってなんのためにあるの?

お薬手帳の本来の意義は、患者さん自身が自分の服用している薬を記録していくことで、薬について正しく知り、薬や治療に対して意識を高めるきっかけになることです。また、医療機関と自分の服薬の情報を共有するという重要な役割もあります。
では、患者さんが提出したお薬手帳を、医師や薬剤師はどのような視点で確認しているのでしょうか?
お薬手帳の内容からは、患者さんに薬を出す際にチェックしておきたい以下のような情報を得ることができます。

  • 副作用歴やアレルギー歴の有無
  • 他の医療機関を受診し、一緒に飲んでいる薬(併用薬)はあるか
  • 相互作用や薬の 重複、患者さんの病名に対する 禁忌薬の有無
  • 過去に使用した薬の履歴 など

患者さんにとって安全で有効な薬物治療を行なえるように確認していますので、医療機関を受診する際には、お薬手帳の提示にご協力をお願いします。複数の医療機関にかかる場合には、情報を共有するためにもお薬手帳を1冊にまとめておくことが重要です。

薬局でお薬手帳を忘れたことに気が付いた女性のイラスト

便利に使えて緊急時にも役立ちます

お薬手帳は、単に医療機関で処方される薬の情報を記録するだけのツールではありません。患者さん自身で、現在や過去の病名、使用している市販薬やサプリメントの名前、体調、お子さんの場合は体重※1などを記入しておくことで、必要なときに情報を引き出せて便利に使えます。
例えば、旅行先で急に具合が悪くなったとき、外出先での思わぬケガや体調不良のときにも役立ちます。実際、災害時の避難先でお薬手帳を携帯していたことで患者さんが使用していた薬がすぐに分かり、命が助かったという例もあります。
このように、緊急時にもお薬手帳によってご自身のお薬に関する情報を活用することができます。病院や薬局に行くときだけでなく、いつも持って出かけるようにしましょう。

※1 多くの場合、子どもの体重によって計算された量の薬が処方されます。

紙の手帳と電子版。使いやすいのはどっち?

皆さんがよく目にするのは紙のお薬手帳だと思いますが、最近はスマートフォン(スマホ)のアプリとして利用できる電子版もあります。普段持ち歩くスマホなら受診時に忘れにくいですし、データ保存容量を確保しておけば長期にわたる服用薬の管理ができます。また、アプリ独自の機能(服薬カレンダー、運動の記録、健康記事など)があるというメリットもあります。
一方、たくさんの種類のアプリがあって操作方法が統一されていない、他の病院・薬局のシステムと連動していないことのデメリットなどが挙げられます。また、薬の名前を提示する必要がある場合に、スマホの画面を他の人に見せにくい(抵抗がある)人もいるでしょう。
紙版と電子版の両方を持っている人もいますが、どちらにも長所・短所があり、どちらの方がよいというものではありません。ご自分の状況に合う、使いやすいと思えるものを選びましょう。

保険証・診察券・お薬手帳が一つに

2021年秋より、一部の医療機関でマイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになりました。事前の利用申し込みが必要ですが、マイナポータル※2で自身の薬剤情報や特定健診※3の数値などが閲覧できるようになり、本人の同意のもとでそれらの情報を医療機関と共有することも可能です。将来的にはお薬手帳の代わりとしても使えるようになることが期待されます。
全国的な導入が進められていますが、カードを読み取る機器の普及が遅れているなど、利用できる医療機関はまだ限られています。

※2 政府が運営するオンラインサービス。登録すると自分専用のサイトを持つことができ、子育てや介護などさまざまな行政サービスの検索やオンライン申請、行政機関からのお知らせの受信などができます。
※3 生活習慣病(糖尿病等)の予防や早期発見・改善を目的に、医療保険者が40歳以上(74歳以下)の加入者に対して実施する健康診査。閲覧できるのは2020年度以降に実施し順次登録されたものになります。

患者さんのお薬の情報を、患者さん本人と医療機関が共有することはとても大切なことです。薬を服用する人は何らかの形でいつでも薬の記録が分かるようにしてください。まだお薬手帳を持っていない場合は、病院を受診したときに作ってもらい、活用しましょう。

※掲載している情報および解説者の所属・役職は、本ページ公開当時のものです。

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