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済生春秋

第70回 知らないことばかり

 今年から狭いベランダでプランターを置いて琉球朝顔を育てた。8月ごろから毎朝、大海のようなブルーの花を咲かせた。目の覚めるような鮮やかな色彩だ。陽が沈むころには萎(しぼ)んでいった。
 それが夏を過ぎても律儀に花を咲かせる。これが12月に入っても続いた。
 小学生のころ、夏休みに庭で朝顔を栽培した。夏休みの半ばぐらいで枯れていった。朝顔は、夏の風物詩のはずだ。東京の入谷鬼子母神の朝顔市も7月上旬である。それが琉球朝顔は、違う生態だ。
 俳句をたしなむ人に話すと、「朝顔は秋の季語だ。俳句をやる人の常識」と教えてくれた。
 
 RUMOUR(うわさ)という英単語をずっと「ルモア」と発音すると思ってきた。最近になって「ルマー」と発音すると知った。
 私たちの中学生時代は、簡単に利用できる英語の音声教材は、ラジオしかなかった。NHKの「ラジオ英会話」と文化放送の「百万人の英語」である。話すことより読むことが重視された時代だった。

 最近、知らないこと、誤って覚えたことがたくさんあると実感する。もっと勉強しなければと思う。

 研究社の「新和英大辞典」が座右の書である。日本語48万語が収録された優れものだ。一日に数回は引く。大概、日本語に対応する英語を見つけられる。簡単なコメントがあるので、百科事典的に使える。
 今日の朝刊で「窃盗症」について報道されていた。衝動的に万引きを繰り返す精神疾患である。裕福な人が数百円の品を万引きする。
 辞典を引くと、「窃盗狂」として「KLEPTOMANIA」が記載されていた。同義であるので、記憶した。英語も一緒に覚えると興味が増し、記憶も固定する。

 人間の頭脳は、使用していない部分のほうがはるかに多い。何歳になっても学び、知識量を豊かにできる。知識は、増えるほど記憶できる。記憶は、他の知識と関係づけることによって固定化する。
 「新和英大辞典」に収録されている言葉を毎日コツコツ勉強する。専門的に取り組む医療、福祉、環境、人権について収録されていない専門用語を発見すると、一層張り切る。日々、こんなささやかなことに楽しみを発見している。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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