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済生春秋

第78回 コーチの力量

 夏の甲子園大会の季節が始まった。
 昔は、大会開始前から出場校の実力の差が歴然とあった。私が高校時代まで育った富山県のチームは、50年前は1回戦を勝てば、大躍進と騒がれる。2回、3回と進めば、お祝いの提灯(ちょうちん)行列だ。
 昭和33年夏、富山県立魚津高校が村椿輝雄投手で準々決勝まで勝ち進み、徳島商業の坂東英二と延長18回まで投げ合ったときは、県内が異常な興奮に包まれた。大会前は、全く予想されなかったので、「甲子園は奇跡を起こす」と思った。
 澄み切った夏空を見ると、いつも魚津高校の清々しい活躍を思い出す。

 しかし、最近は様相を異にした。実力が接近し、どの高校も優勝の可能性がある。地方の高校にも優れたコーチが出てきたからだろう。
 才能がある少年は、全国どこでもいるが、これを伸ばすかは、コーチ如何(いかん)にかかっている。最近の高校の野球部の指導者にプロやアマで活躍した人が招かれ、実績を上げている。

 どんな分野であれ、年少時代は、指導者による影響が圧倒的である。
 50年以上前の古いことなので、話しても許されるだろう。
 高校時代のある理科系の科目の授業は、2人の先生が同じ学年の学級を分担して担当された。学期末試験は、同一の試験問題で行なわれたが、成績結果に大きな差があった。一方の最低点が、他方の最高点と思われるくらいだった。生徒の勉強不足だけだったのだろうか。
 私は、悪かった方に属していた。理科系の勉強は、嫌いでなかったが、教師は、生徒の反応を気にせず、教科書を読み進むだけだった。市販の参考書を買って勉強したが、基本的なことが理解できなかった。自分の進路に影響を与えた。

 できれば指導者に左右されず、自分の努力で実力が養成されることが望ましい。良い指導者に巡り合えるかは、運任せだからだ。
 私は、性格的に独学の方が向いている。コツコツと自分のペースで本で勉強することが好きだ。自分の都合に合わせて勉強できる。
 独学の場合も、他人から「ほんの一言」の助言が大きなヒントになる。放送大学やNHKラジオの講座を利用している。質が高く、独学者にとってありがたい存在だ。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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