社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい) SDGS rd05
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2022.01.31

しっかり寝ても眠い……これって過眠症?

寝不足でもないのになぜか眠い。もしかしてこれは病気?と思い「過眠症」を検索する人が一定数いるようです。そこで、考えられる原因や日常生活で気をつけたいことを済生会福岡総合病院・心療内科主任部長の棚橋徳成先生に教えてもらいました。

“なんか眠い……”にもさまざまなタイプがある

「過眠」とは「日中に過度な眠気がある」ことをいい、特別に過眠症状を示す病気を「過眠症」と呼びます。原因は実にさまざまです。「過眠症」という病気そのものだけでなく、他の病気の一症状として「過眠」が現れることもあります。また季節など環境的な要因も考えられます。
そこで、まずは過眠症状の強さや頻度、持続時間、睡眠時間の長さや質、時間帯のパターン、日常的に摂取している物質の影響、身体や心に関わる病、眠気以外の病気に伴う症状(随伴症状)などをみていく必要があります。

過眠の原因

  分類 詳細(疑われる症状・病気など)
日常生活上の問題 ① 睡眠不足 睡眠不足症候群、長時間睡眠者
② 睡眠の質の低下を起こす環境 睡眠に適さない音、光、温度、湿度、寝具など
③ 摂取物質の影響 アルコール、カフェイン離脱、抗アレルギー薬、睡眠薬など
病気の一症状 ④ 身体疾患 花粉症、脳血管疾患、頭部外傷、全身性炎症疾患、甲状腺機能低下症など
⑤ 心理的ストレス、精神疾患 緊張感、不安抑うつ気分不眠症うつ病、双極性障害など
⑥ 睡眠の質の低下を起こす疾患
  (睡眠障害)
睡眠時無呼吸症候群むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害
⑦ 概日リズム睡眠・覚醒障害 時差ぼけ(ジェットラグ)、交代勤務、睡眠・覚醒相後退障害など
過眠症 ⑧ 中枢性過眠症 ナルコレプシー特発性過眠症反復性過眠症(クライネ-レビン症候群)

①~③は日常生活を改善することで現状がよくなることがある範囲、④以下は何らかの病気の兆候である可能性が高く、一度ドクターと相談した方がよいでしょう。特に危険な作業や運転を行なう場合に強い眠気があると大事故につながりかねません。医療機関(睡眠専門外来など)の受診をお勧めします。

春になると「過眠」が増える?

季節ごとの睡眠を調べた日本の調査論文では、日中の過度な眠気がある人の割合は春に最も多かったという結果が出ていますが、統計的に証明できるほどの差はありませんでした。
しかし、春に日中の眠気が強くなる人たちは一定数います。
診療でよくみられるのは、引越しや職場での配置転換など「年度替わりの環境変化」が原因と思われるケースです。多忙や心理的ストレスによる睡眠不足や不眠が起こり、集中力の低下、不機嫌、疲労など、日常生活に影響を及ぼします(睡眠不足症候群もしくは不眠症)。
眠気や集中力低下をおさえるため、コーヒーやエナジードリンクなどのカフェインをとり過ぎた結果、神経過敏、胃腸障害、頻脈などの中毒症状を生じることがあります。さらに長期の睡眠不足によって、肥満症糖尿病高血圧症といった生活習慣病や、脳血管・心血管疾患などの病気を引き起こす危険が高まります。
また、花粉症の治療で内服する「抗アレルギー薬による眠気」も要因の一つです。『日本耳鼻咽喉科学会会報』に掲載された論文によれば、花粉症患者の25%に日中の眠気がみられ、花粉症の症状が重くいびきを伴う場合に日中の眠気が多い、と分かりました。

病気の一症状として現れる「過眠」

病気の一症状としての「過眠」があります。 代表的なものとして、秋から冬にかけて抑うつ気分が出て、春や夏になるとよくなることを繰り返す冬季うつ病(季節性感情障害) 、睡眠中に空気の通り道(気道)が狭くなり、周期的に呼吸が止まる、あるいは呼吸が弱くなる閉塞性睡眠時無呼吸症候群、夜眠れず、日中の眠気や疲労などの不調が現れる不眠症などがあります。
また、起床すべき時間帯に過眠が起こり夜間に眠れない、いわゆる時差ぼけ(ジェットラグ)のような状態の症状を「概日リズム睡眠・覚醒障害」と呼びます。健康な人であれば一時的な症状のみですぐに適応できますが、場合によっては疲労や頭重感、食欲低下、胃腸障害などの身体症状が現れます。原因は体内時計(概日リズム)の乱れによるもので、昼夜が逆転するような交代勤務の人にもみられます。
入眠時間が遅く、朝は起きることができないために概日リズムが一定に遅くなる「睡眠・覚醒相後退障害」は若年者によく起こる一方、夜早く眠り、早朝に目覚める「睡眠・覚醒相前進障害」は高齢者に多くみられます。

特に注意したい、概日リズムの乱れ

私たちの体内時計(概日リズム)は、地球の自転周期・24時間よりやや長い周期を持っています。そのため毎日の環境刺激によって体内時計が乱れないように修正しています。この概日リズムの同調には、光による刺激が最も強力といわれています。朝、太陽光に当たること、また朝食(食事による刺激)をとることはとても大切です。

日中に耐えられないほどの眠気があれば「過眠症」

日中に過度な眠気があり、表の過眠の原因①~⑦が診療の結果当てはまらないようであれば、下記のような「過眠症(中枢性過眠症)」を疑うことになります。

ナルコレプシー

通常居眠りするような状況でなくても眠り込んでしまう「睡眠発作」を繰り返し、居眠りが10~20分程度持続します。また、笑い、怒り、悲しみ、驚きなど、強い感情の変化が生じたときに、突然全身の筋肉が脱力する「情動脱力発作」を伴うことがあります。日本の一般人口での有病率は0.16~0.59%、発症年齢は10歳代です。
☆もっと詳しく→症状別病気解説「ナルコレプシー」

特発性過眠症

主な症状は日中の過度な眠気ですが、ナルコレプシーよりも眠気の強さが軽いとされます。原因は明らかでなく、有病率ははっきりしませんが、ナルコレプシーの1/3~3/4程度と推測され、発症年齢は10~20歳代です。
☆もっと詳しく→症状別病気解説「特発性過眠症」

反復性過眠症(クライネ-レビン症候群)

過度の眠気を生じ、ほとんど1日中寝て過ごす状態が2日~5週間持続し、それが年に1回以上反復します。同じように反復性の過眠が起こる季節性感情障害、双極性障害といった病気を除外する必要がありますが、非常にまれな病気で、100万人に1~2人と推定されています。
☆もっと詳しく→症状別病気解説「反復性過眠症」

予防のために心がけたいこと

過眠症、不眠症などを含む睡眠障害全般に対する予防には、「睡眠障害対処12の指針」(『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』より)が役立ちます。現状で睡眠に不安がある人は、この指針を参考に、日常生活を改善しましょう。

1 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
歳をとると必要な睡眠時間は短くなる

2 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
就床前4時間のカフェイン摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング

筋弛緩トレーニング
筋肉を意図的に緊張させてからゆるめるもの

首をすくめてぎゅっと両肩を持ち上げた姿勢を10秒キープ
※70%の力で

両足のつま先を前にぎゅっと伸ばして10秒キープ

息を吐きながらスーッと脱力し、力の抜ける感覚を味わう

息を吐きながらスーッと脱力し、力の抜ける感覚を味わう

*その他のリラックス法として自律訓練法があります。自分に合った方法を取り入れましょう。

3 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする

4 同じ時刻に毎日起床
早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる

5 光の利用でよい睡眠
目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
夜は明るすぎない照明を

6 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
朝食は心と身体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
運動習慣は熟睡を促進

7 昼寝をするなら、15時前の20~30分
長い昼寝はかえってぼんやりのもと
夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響

8 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る

9 睡眠中の激しいいびき・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
背景に睡眠の病気、専門治療が必要

10 十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
車の運転に注意

11 睡眠薬代わりに寝酒は不眠のもと
睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる

12 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
一定時刻に服用し就床
深い睡眠を減らす、アルコールとの併用をしない

参考資料
内山 真(編)『睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版』じほう, 2019
米国睡眠医学会(著)・日本睡眠学会診断分類委員会(訳)『睡眠障害国際分類第3版』ライフ・サイエンス, 2018
日本睡眠学会(編)『睡眠学』朝倉書店, 2010
Suzuki M, et al. Seasonal changes in sleep duration and sleep problems: A prospective study in Japanese community residents. 2019, PLOS ONE 14(4): e0215345
田中翔太ら:春季花粉症患者のいびきと日中の眠気に関する質問票調査, 日本耳鼻咽喉科学会会報, 2017, 120巻, 1号, p.36-43

解説:棚橋 徳成

解説:棚橋 徳成
福岡総合病院
心療内科主任部長

※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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