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2024.12.04

アカントアメーバ角膜炎

acanthamoeba keratitis

解説:大田 遥 (呉病院 眼科 主任医長)

アカントアメーバ角膜炎はこんな病気

アカントアメーバ角膜炎とは、土壌や水中に存在するアカントアメーバという原虫が角膜に負った傷から眼の中に入り込むことで引き起こされる角膜感染症です。患者の多くがコンタクトレンズ使用者で、コンタクトレンズの不適切な使用、角膜の外傷からの侵入、汚水との接触などが原因に挙げられます。病態は不明な点が多いですが、黒目の周辺が網目状に赤くなる毛様充血(もうようじゅうけつ)や、角膜の神経に炎症が起きる神経炎など特徴的な臨床所見がみられます。
初期には、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査で「放射状角膜神経炎」や、木の枝のような形をした「偽樹枝状病変(ぎじゅしじょうびょうへん)」がみられ、病状が進行し重症化すると、角膜実質(角膜の奥の層) に白血球が入り込むことで、輪状や円盤状に白く濁る(角膜浸潤)がみられます。病状が「角膜ヘルペス」とよく似ているため、病院での鑑別が重要になります。

 

アカントアメーバ角膜炎の症状

眼の異物感、刺すような強い眼痛、涙が過剰に出る、毛様充血、視力低下などの症状が現れます。

 

アカントアメーバ角膜炎の検査・診断

毛様充血や「放射状角膜神経炎」「偽樹枝状病変」などの臨床所見に加え、涙や目やになどの眼材をスライドガラスに塗り、観察しやすいよう染色して菌の有無や形、量などを顕微鏡で観察します(塗沫鏡検査)。また、こすって検体を採る擦過(さっか)で角膜組織を採取し、アカントアメーバ培養検査でアカントアメーバが検出されるかを確認します。最近では角膜擦過が不要で、可視光で微小な物体を拡大して観察する光学顕微鏡よりも高い解像度で像を検出できるレーザー共焦点顕微鏡での検査や、角膜組織からアカントアメーバDNAを検出するPCR法もあります。

アカントアメーバ角膜炎の治療法

現在、アカントアメーバに効果のある治療薬は開発されていません。そのため、角膜の中で原因となる菌が集まっている病巣部(びょうそうぶ)を掻き出す角膜病巣掻爬 (そうは)を行ない、アメーバを直接除去します。アカントアメーバを物理的に除去したうえで、消毒薬であるクロルヘキシジングルコン酸塩点眼、またはPHMB点眼を、第一選択薬として使用します。病状が進行しており、薬物療法では効果をなさない症例に対しては、病原微生物が繁殖している感染巣(かんせんそう)を切除し、治療的角膜移植を行ないます。

 

 

眼の異物感や痛み、涙が出る、毛様充血、視力低下などの症状が現れたら早めに眼科を受診しましょう。

コンタクトに触る前の手洗いや、洗浄液を使用した十分な洗浄、ケースは毎回洗って乾燥させる、使用期限や期間を守るなど、コンタクトレンズの正しいケアや使用が予防につながります。

解説:大田 遥
呉病院
眼科 主任医長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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