社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2023.01.11

脳性麻痺

cerebral palsy

解説:摺木(するき) 伸隆 (川内病院 小児科部長)

脳性麻痺はこんな病気

脳性麻痺とは、赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるとき(胎児期)から産まれて間もなく(生後4週間以内)の時期に受けた脳神経細胞の損傷によって、運動機能の障害(運動障害)などを起こす症候群です。運動障害以外に、知能の低下や摂食障害、呼吸機能障害などを併せて引き起こすこともあります。
進行性疾患(乳児型神経軸索ジストロフィーなど)や一過性の運動障害、将来正常化するであろうと思われる運動発達遅滞は、脳性麻痺から除外されます。

原因としては、胎児期における母体の風疹やトキソプラズマ症などの感染、出生前後の低酸素状態、核黄疸(かくおうだん=新生児期に現れる重度の黄疸によって起こる脳の障害)などがありますが、不明な場合もあります。
なお、まれに遺伝子異常による脳の奇形が脳性麻痺の原因となることがあります。

脳性麻痺の症状

損傷した脳神経細胞の部分によってさまざまな症状が現れます。特に多いのは運動機能を担う部分(運動野)の損傷によるもので、その場合は運動能力の発達に遅れが出ます。

運動障害の性質により4つのタイプに分類されています。

①痙直(けいちょく)型:筋肉のこわばりがあり、ピーンと張って固くなる
②アテトーゼ型:自分の意思と関係なく手足や体幹がうねうねと動く
③失調型:身体のバランスが取りにくい
④混合型:①~③のうち2つ以上の組み合わせ。特に痙直型とアテトーゼ型の混合が多い

脳性麻痺の検査・診断

発達の遅れや筋緊張の程度、身体のバランスを取る「姿勢反射」の異常の有無などの診察所見と、頭部のMRI検査やCT検査によって診断します。
また、脳性麻痺と同様の症状がみられても、筋肉に原因があるなど他の病気の可能性もあるため、それを見極めるために血液検査を行なうことがあります。

脳性麻痺の治療法

損傷した脳神経細胞は修復が困難であるため、残念ながら脳性麻痺は手術や薬では治せません。
リハビリテーションを行なうことで、残った正常な脳神経細胞によって日常生活をできる限り自立して送れるように、身体のさまざまな機能の改善・調整を図ります。
リハビリには主に次の3種類があります。

理学療法(PT):関節や筋肉の機能を改善して運動の発達を促す
作業療法(OT):現在の運動機能を調整して基本的な日常生活を送れるように促す
言語療法(ST):はっきり話したり、口から食べ物を食べたりできるように促す

そのほかに、適正な装具を使用して関節のバランスを取ることや、筋肉の過剰な緊張を取り除くために薬物療法を行なうこともあります。

産まれる前後で低酸素状態であったり、早産であったりなど脳性麻痺になるリスクの高い赤ちゃんは、定期的に発達状態をチェックすることで早期発見と早期の治療(リハビリなど)の開始につなげるようにしましょう。

原因を特定することが難しいケースも多く、完全に予防することは難しいです。
妊娠中は脳性麻痺の原因となる風疹やトキソプラズマ症などの感染に気をつけましょう。

解説:摺木(するき) 伸隆

解説:摺木(するき) 伸隆
川内病院
小児科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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