社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2021.10.06

筋腱付着部障害(筋腱付着部症)

enthesopathy

松井 智裕 (奈良病院 整形外科部長)

筋腱付着部障害はこんな病態

筋肉の最も重要な役割は、関節を動かすことです。筋肉は2つ以上の骨にまたがって付着しており、その筋肉が伸びたり縮んだり(伸張/収縮)することで、2つの骨のつなぎ目である関節を動かします。
このとき、最も大きな負荷が加わる部位を考えてみてください。電源コードに例えると、軟らかいコード(筋肉)と硬いプラグ(骨)のつなぎ目の部分がよく壊れます。ヒトの身体も同じで、軟らかい筋肉が関節付近で腱に変化して硬い骨にくっつく「腱付着部」に負荷が集中し、障害が起こりやすくなります。
筋腱付着部障害(筋腱付着部症)とは、スポーツ活動などによる高負荷の反復運動や、加齢による変性(経年劣化)が原因で、腱付着部に小さなダメージが蓄積されて疼痛や機能障害が出現した状態です。

筋腱付着部障害はいろいろな部位に発生します。特に好発するのは肘関節外側(上腕骨外側上顆炎、テニス肘)、膝関節(ジャンパー膝、膝蓋腱炎、大腿四頭筋腱炎)、踵(アキレス腱付着部炎、足底腱膜炎)です。

筋腱付着部障害の症状

好発部位の筋腱が伸張されるとき、腱付着部に疼痛を生じます。テニス肘では手首や中指を伸展する(反らす)と痛みが生じます。ジャンパー膝やアキレス腱付着部炎では、ランニングやジャンプの動作によって痛みが出現します。足底腱膜炎では起床して1歩目の痛みが特徴的です。原因となる運動をやめて安静にすると症状は軽減しますが、運動を再開すると症状が再燃することが多いです。

筋腱付着部障害の検査・診断

腱付着部に狭い範囲で皮膚に圧を加えたときに感じる痛みが認められ、腱の伸張テストを行なうと疼痛が誘発される場合に診断されます。画像検査では、超音波検査が簡便で有用です。腱付着部の骨棘(こつきょく=関節面辺縁の骨がとげのように突出したもの)や石灰化を評価するためのX線検査、腱内部や付着部の骨内部の変化を評価するためのMRI検査を行なうこともあります。

筋腱付着部障害の治療法

筋腱が伸張されながら収縮する動きをゆっくりと行なう「遠心性収縮運動」や、器具を装着して腱付着部への負荷を軽減する「装具療法」を行ないます。また、飲み薬(消炎鎮痛薬)や外用薬が処方されます。なかなか改善しない場合には、腱付着部への注射療法や体外衝撃波治療、再生医療の一種であるPRP(多血小板血漿)療法を行ないます。ただし、体外衝撃波治療は6カ月以上治療を続けても改善しない難治性足底腱膜炎のみ保険適用となっており、筋腱付着部障害に対する使用は保険外診療となるため、すべての病院で行なえる治療ではない点に注意が必要です。また、PRP療法も保険適用外の治療であるため、行なっている病院は限定されます。
上記の各種保存療法で効果が得られない場合には、手術療法が行なわれることもあります。

発症初期では、動き始めに痛みがあっても、しばらく動いていると痛みが軽減していきます。始めだけ我慢すれば問題なく運動できるけれども、運動後に痛みが出現する、ということも初期には多くみられます。これらの症状がある場合には、早いうちに整形外科を受診することをお勧めします。

筋腱付着部障害の予防にはストレッチが有効です。また、遠心性収縮運動が、筋腱付着部障害の予防・治療として有効であるといわれています。

松井 智裕

松井 智裕
奈良病院
整形外科部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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