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2022.09.07

前頭側頭葉変性症

frontotemporal dementia

解説:冨本 秀和 (明和病院 院長)

前頭側頭葉変性症はこんな病気

前頭側頭葉変性症は、脳の前頭葉や側頭葉に萎縮が起こる認知症で、行動障害や言語障害などの症状がみられます。


以前は、前頭側頭葉変性症の症状が出る病気を「ピック病」と呼んでいました。ピック病は脳の神経細胞内にピック球という封入体(異常な物質のかたまり)ができることで、前頭葉や側頭葉が萎縮する病気です。近年では、ピック球がみられる場合だけピック病と呼ぶようになりました。ピック病を含めて、前頭葉・側頭葉が萎縮し、脳の神経細胞やグリア細胞(神経細胞以外の細胞の総称)の内部に異常タンパク質が蓄積して封入体を形成する進行性認知症全般を、前頭側頭葉変性症と呼んでいます。

なお、臨床診断名(確定診断まで便宜上使われる病名)として「前頭側頭型認知症」と呼ばれることがあります。

前頭側頭葉変性症の症状

前頭側頭葉変性症は症状によって、3つの病型に分類されます。

1 行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)
2 意味性認知症
3 進行性非流暢性失語

bvFTDでは進行性の異常行動(社会的に不適切な言動や突然の立ち去り行動など)や、認知機能の障害がみられます。
例を挙げると、「お金を払わずにスーパーの食品を食べる」「会話や会議の途中で理由なく突然いなくなる」「赤信号を平気で渡る」「同じことに固執して繰り返す(常同行動)」などのほか、「同じ場所をぐるぐる回る(周徊)」「過食・異食、なんでも口に入れてしまう(口唇傾向)」などの行動障害が特徴的です。
意味性認知症では、物の名前が出てこない、リンゴを見ても食べ物と理解できないなどの症状がみられます。
進行性非流暢性失語では、発語に滑らかさが失われ、たどたどしい話し方や音韻のひずみ(「学校に行くときに」を「がっこに、いくのときに」と話すなど)が特徴的です。

前頭側頭葉変性症の検査・診断

症状などから前頭側頭葉変性症が疑われる場合、頭部MRI検査や脳血流シンチグラフィ(脳の血流の変化を調べる検査)により脳の萎縮部位や脳血流の変化を調べます。
bvFTDでは前頭葉や側頭葉前部に萎縮が見られます。意味性認知症では側頭葉(特に前方部分)に、進行性非流暢性失語では特に左前頭葉後部から島と呼ばれる部位にかけて、萎縮や脳血流の低下がみられます。
また、認知機能を把握するために神経心理検査を行ないます。前頭側頭葉変性症では、記憶や視空間認知は相対的に保たれており、遂行機能や注意機能の低下が認められます。

前頭側頭葉変性症の治療法

現状、認知機能を改善する治療法はありませんが、行動障害が目立つ場合には抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が有効な場合があります。また、同じ時間帯の入浴誘導など日常生活動作を習慣化することによるケアも行動障害には有効とされています。

前頭側頭葉変性症では、アルツハイマー型認知症で特徴的な症状である物忘れは目立って現れません。好きだった趣味をしなくなったり、ぼんやりしている時間が多くなるといった意欲や自発性の低下が診断のきっかけになります。

残念ながら、現在のところ前頭側頭葉変性症を予防する確かな方法は見つかっていません。高齢の近親者に言動の変化がみられるなど病気の兆しを感じることがあれば、速やかに専門の医療機関を受診するようにしましょう。

解説:冨本 秀和

解説:冨本 秀和
明和病院
院長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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