社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2021.07.21

原発性アルドステロン症

primary aldosteronism

解説:金子 正儀 (新潟病院 代謝・内分泌内科 医長)

原発性アルドステロン症はこんな病気

腎臓の上部にある副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌され、高血圧を引き起こす病気です。

アルドステロンには、体内の塩分(ナトリウム)や水分の量を調整して、血圧を正常に維持する働きがあります。健康な状態では、体内の塩分・水分量の低下を受けて腎臓から出されるレニンという酵素によって、アルドステロンの分泌は制御されています。
しかし原発性アルドステロン症では、アルドステロンが自律的に(レニンの分泌と関係なく)過剰に分泌されることで、体内の塩分・水分量が増加し、血圧が上昇します。

アルドステロンが過剰に分泌される原因は大きく二つあります。一つは副腎の腫瘍(ほとんどが良性腫瘍)。もう一つは、左右両側の副腎でアルドステロン分泌細胞が多く形成される「過形成」と呼ばれるものです。

原発性アルドステロン症の症状

高血圧の症状がみられます。高血圧が持続すると動脈硬化を起こし、脳卒中や虚血性心疾患、眼底出血などの原因となります。
また、腎臓で塩分(ナトリウム)の再吸収が亢進し、代わりにカリウムの排出が進みます。その結果、重症の場合は低カリウム血症(血液中のカリウム濃度が非常に低い状態)が生じます。
原発性アルドステロン症の患者さんで低カリウム血症が出現するのは5割未満といわれていますが、塩分の過剰摂取や利尿薬の使用によって低カリウム血症が誘発されるケースもあります。
低カリウム血症は一般的な高血圧ではみられず、原発性アルドステロン症による高血圧特有の症状といえます。

原発性アルドステロン症の検査・診断

レニンの値が低く、副腎からアルドステロンが過剰に分泌されている場合、原発性アルドステロン症と診断されます。
スクリーニング検査で血中のアルドステロンとレニンを測定し、アルドステロン/レニン比(ARR)が200以上の場合、この病気を疑います。

高血圧の約90%は原因が特定できない本態性高血圧ですが、その場合は塩分(ナトリウム)を過剰に摂取するとレニンの分泌が抑制されるため、アルドステロンも低い値を示します。しかし、原発性アルドステロン症では、塩分摂取が過剰であっても副腎からアルドステロンが過剰に分泌されます。ここが原発性アルドステロン症と本態性高血圧の違いになります。

また、原発性アルドステロン症と診断された場合、アルドステロンの過剰分泌の原因が副腎腫瘍か左右両側副腎の過形成かを見分けるために、副腎静脈から血液を採取する副腎静脈サンプリング検査を行ないます。

原発性アルドステロン症の治療法

◇副腎腫瘍が原因の場合
手術(外科療法)によって腫瘍を取り除くことで根治することができます。原発性アルドステロン症の治癒に伴って高血圧も治癒する症例は、約半数といわれています。特に高血圧罹患歴が短い人や若年女性では高血圧の治癒が多くみられます。
ただ、高齢者や周術期(手術中に加え前後の期間を含めた一連の期間)のリスクが高い人、手術による根治治療を望まない患者さんなどには、薬物治療が選択されることもあります。

◇左右両側副腎の過形成が原因の場合
手術の対象とならず、アルドステロン拮抗薬による治療を行ないます。アルドステロン拮抗薬はアルドステロンの働きを抑制し、塩分(ナトリウム)の排出を促進させてカリウムの排出を減少させます。ただ、アルドステロンの分泌量は低下しないため、根治治療とはなりません。

かつては、高血圧患者さんに占める原発性アルドステロン症の割合は1%程度と考えられていました。しかし近年では、高血圧患者さん全体を対象としてスクリーニング検査を行なうことが推奨されるようになったため、患者さんに占める割合は増加し、5%程度と考えられています。重症の高血圧患者さんの中では、その割合はさらに上昇します。

発見のポイントは以下になります。

●低カリウム血症がみられる
●30~50歳代で高血圧症を患っている
●高血圧の家族歴がない
●CT検査で副腎腫瘍が指摘された
●複数の降圧薬でも血圧管理が不十分
●若年で脳卒中を発症した

上記に合わせて、アルドステロンやレニンを計測した場合に発見のきっかけとなります。

病気の性質上、予防というよりは早期発見が重要になります。「早期発見のポイント」で記しているように、アルドステロンやレニンの計測が早期発見につながります。適切に治療すると、高血圧が持続することによる虚血性心疾患や脳卒中のリスクを低減できる可能性があります。

「特に家族歴がないのに血圧が高め」「血液検査ではいつもカリウムの値が低いといわれる」「年齢が若いのに脳卒中を起こしたことがある」「睡眠時無呼吸を指摘され、血圧も高め」などの徴候がある場合は、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。

解説:金子 正儀

解説:金子 正儀
新潟病院
代謝・内分泌内科 医長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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