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2024.09.04
網膜裂孔(もうまくれっこう)は「網膜(目の底にある薄い膜)」の一部に裂け目が生じる病気です。
眼球には、外から入ってきた光を屈折させて対象にピントを合わせる水晶体と、入ってきた光を感じる網膜との間に、大きな空洞が存在します。その空洞は通常、硝子体(しょうしたい)という透明なゼリー状の物質で満たされていますが、年齢を重ねるにつれ、硝子体はサラサラの液体に変化(液化変性)し、硝子体の容積は徐々に減少していきます。
さらに液化変性が進行していくと、硝子体が眼球の内側に向かって収縮し、接していた網膜から剥がれはじめます。この現象を「後部硝子体剥離」といいます。これは50代以降に起こる生理的な変化ですが、その際に硝子体と網膜が強く癒着している部分があったり、網膜に弱い部分があったりすると、硝子体が収縮するときに網膜を引っ張り上げて、網膜に裂け目が生じます。これを「網膜裂孔」といいます。
視界にひも状の濁りがチラチラと映る飛蚊症や、暗いところで閃光が走るような光が見える光視症が起こるといわれています。網膜が裂けた際に、周囲の血管を傷めた場合は、硝子体の中に出血がたまることがあります(硝子体出血)。出血量によって見え方に違いがあり、少量であれば一般的な飛蚊症程度ですが、多量の場合は視力の低下につながる場合もあります。
網膜に生じた裂孔自体をもとに戻すことはできません。その後、症状が進行して硝子体中の水分が網膜裂孔の穴から網膜の下に入り込むと、網膜が剥離していきます(裂孔原性網膜剥離)。
瞳孔を広げる点眼薬である散瞳薬(さんどうやく)を使用して眼底検査を行ない、診断します。
網膜裂孔から裂孔原性網膜剥離に発展しないように予防することを目的とし、裂孔周囲の網膜に「レーザー光凝固術」を行なうのが一般的です。
レーザー光凝固術とは、眼球の先端の角膜の上にレンズを当てて網膜裂孔の部分を拡大し、その周囲をレーザー光で正確に凝固する手法です。凝固された部分は時間をかけて修復されて傷がふさがり、傷跡になる瘢痕(はんこん)化により、網膜がその裏側の組織と癒着することで、網膜剥離への進行をおさえることができます。レーザー光凝固術は、網膜裂孔のみの場合、あるいはその周囲にわずかな網膜剥離が生じている場合に有効で、ある程度進行した大きな裂孔原性網膜剥離に対しては適応となりません。裂孔原性網膜剥離の場合は、外科手術が必要になります。
飛蚊症や光視症と思われる症状が出たら、なるべく早く眼科を受診しましょう。
加齢による生理的なもので、治療の必要がない場合も多いですが、見極めには眼科医の診断が必要です。すでに飛蚊症と診断されている人で、飛蚊症の症状が急に強くなったり、いつもとは異なったりする場合も、速やかにかかりつけ医に相談してください。
網膜裂孔を完全に予防することは難しいと言われています。
検診などで眼底検査を受けたときに、たまたま網膜裂孔が見つかることも少なくないため、50歳を過ぎたあたりで、一度眼底検査を受けることをお勧めします。
解説:山中 一郎
飯塚嘉穂病院
眼科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。