社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2021.11.17

有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がん

squamous cell carcinoma

解説:中川 浩一 (富田林病院 皮膚科 部長)

有棘細胞がんはこんな病気

有棘細胞がんは皮膚がんの一つで、皮膚の表皮の中間にある有棘層の細胞にできた腫瘍が悪性化したものです。
皮膚がんというと一種類の病気だと思われがかちですが、皮膚の細胞に発生したがんの総称で、いくつかの種類があります。有棘細胞がんのほかに主なものとして、メラノーマ(悪性黒色腫)基底細胞がん乳房外パジェット病が挙げられます。
メラノーマは皮膚がんの中で最も悪性度が高く、日本では毎年数百人がこの病気で亡くなっています。有棘細胞がんはメラノーマに次いで悪性度が高い皮膚がんです。発症の原因としては紫外線の影響が最も大きく、長時間日光に当たる機会が多かった人は要注意です。熱傷(やけど)や重度の外傷瘢痕(はんこん=傷あと)が原因になることもあります。

有棘細胞がんの症状

顔や首など主に頭頸部に好発しますが、四肢にできることもあります。12cmの大きさのものが多いですが、時に数cmまで大きくなって受診する患者さんもいます。紅色からピンク色の肉芽様(柔らかい粒状の結合組織)の状態がみられ、皮膚の表面から盛り上がって結節(しこり)のようになります(写真)

表面は湿っていて、時に出血を伴うこともあります。痛みやかゆみは少ないようですが、大きくなると悪臭を伴います。

有棘細胞がんの検査・診断

他の皮膚病と同様に視診のみで診断されることもありますが、皮膚生検(皮膚を一部採取して調べること)が重要です。病理組織検査(採取した組織を顕微鏡で調べる検査)では表皮から連続して角化細胞が真皮や皮下組織まで浸潤して(広がって)います。同心円状に層になった角化物、いわゆる「癌真珠」(horn pearl)がみられることが診断の根拠となります。
まれに、初診時からリンパ節転移を生じていることありますので、超音波検査でリンパ節転移がないかを調べます。さらに、他の臓器への遠隔転移の有無を診断するためにCTMRIPET検査を行なうこともあります。

有棘細胞がんの治療

手術による治療が第一選択です。がんを取り残さないように、肉眼で確認できる病巣からその周りの正常な部分を1cm弱含めて摘出します。がんが転移する前であれば、その病巣を完全に取り除けば、理論上は根治したということになります。したがって、取り残しがないかを調べるために、摘出した標本について病理組織検査を丁寧に行ないます。
こうして病巣が完全に取り除けたとしても、定期的に術後観察を行なうなど、手術の後のフォローアップは重要です。手術ができないような部位にがんがあるときや、全身状態が悪いときには放射線治療が選択されることもあります。なお、有棘細胞がんに特に有効性が高いとされる抗がん剤は見当たりません。

有棘細胞がんに限らず皮膚病すべてにいえることですが、この病気は自分自身でその状態を観察できます。すなわち、病状を自分で見たときに皮膚がんを疑うかどうかが早期発見の決め手になります。もちろん一般の人に皮膚がんの診断はできませんので、少しでも疑わしいと思ったら医療機関を受診することが肝要です。先に書きましたが、野外労働などによって強い紫外線を浴びた人で顔に何かできていることに気づいたときは、必ず受診しましょう。

富田林病院では毎月1回「皮膚がん検診」を実施しています。
詳細は病院ホームページをご参照ください。

日光に当たること(紫外線)が原因のがんの場合、日光角化症と呼ばれる早期がんが先に発生することが多いようです。この日光角化症が有棘細胞がんに進展することもよくあります。
いずれにしても紫外線の影響を少しでも食い止めるためには、遮光が必要です。外出するときには日傘や帽子を着用し、紫外線をカットする日焼け止めクリームを皮膚に塗ってください。もちろん、短い期間紫外線を浴びることは心配ないですが、紫外線による長期の皮膚ダメージはがんを引き起こす要因になります。
熱傷や外傷がなかなか治らないときは、必ず医療機関で治療を受けてください。傷が治ったように見えて、いつまでも治りきらない状態のところから有棘細胞がんが発生することもあります。

解説:中川 浩一

解説:中川 浩一
富田林病院
皮膚科 部長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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