なでしこナースのストーリー

Aさんのこと

Aさんのこと

病棟に、ご高齢のAさんが入院していました。
「あんたも東日本に応援に行ったの?」
「いえ、私はちょっと機会がなかったもので」
「看護師さんはやっぱ、あんな大地震があったりすると、行かないといかんのでしょう」
「行かないとダメということはないけど……」。

Aさんは処置している間中、話を続けます。
「関東大震災では済生会の看護師さんが大活躍したんですよ」。
昔のことは分からないので、
「そうですか。Aさんは見たんですか?」と生返事。
「子どもの時、親父から聞いたんだけどね」

それから1カ月ほどして院内誌の関係で済生会の100年誌を開いていたら、偶然、関東大震災で済生会の看護師がどんな活動をしたのか、出てきました。医師が足りないので看護師だけの巡回看護班を編成して避難所を回り、今度は看護師も足りなくて、社会活動家の賀川豊彦という人が素人の女性たちを集めて臨時に教育を施し、看護班に編入していったんだそうです。

そんなこと、ちっとも知らなかった。でも、この間、宮崎駿の「風立ちぬ」を観たら、関東大震災のシーンが出てきて、ああ、この時、私の大先輩たちが走り回ったんだなあと、ちょっと感動しました。

あのAさんが言ってくれなかったら、関東大震災のところに目なんか止まらなかったはずです。当たり前だけど、高齢の方には歴史がいっぱい詰まっているんだな、なあ~んて思ってしまいました。

なでしこナースのストーリー 一覧へもどる