2022.08.22
Vol.05
薬の保管、きちんとできていますか?
家庭での薬の保管はどのようにしていますか? 飲み忘れや飲み間違いなどのないように工夫していると思いますが、薬の保管にあたってはいくつかの注意点があります。薬の使用期限や、誤飲を防ぐ上で気をつけることなどとも合わせて、薬の保管について改めて確認してみましょう。
熊本病院 薬剤部
北岡 朋子
薬はどのように保管すればいい?
ポイント① 直射日光を避け、涼しい場所に
医師や薬剤師などから保管方法の指導を受けたり、薬の説明書や薬の袋に保管方法が記載されたりしている場合は、その指示を守りましょう。特に指示のない場合は室温(1~30℃)で保管します。薬箱や缶に入れ、直射日光を避け、なるべく涼しい場所に保管してください。冷所(1~15℃)での保存の指定がある薬は、冷蔵庫に保管します。ただし、凍ってしまうと変質してしまう成分もあるので、冷蔵庫に保管する際は冷気が直接当たる送風口の近くは避けましょう。
ポイント② 他の容器に入れ替えない
PTP包装シートに入っている錠剤やカプセルは、シートのまま保管しましょう。薬の中には湿度や光に弱く、使用直前にPTP包装シートから取り出す必要があるものもあります。
また、医療機関で受け取った薬の袋に入れたまま保管しておきましょう。袋には薬の名前や服用の仕方などが記載されており、そうした情報が分からなくなることや、誤使用による事故を防ぐためです。薬の説明書も、使用上の注意点や副作用、飲み合わせなどの情報が確認できるよう、薬を使い切るまでは一緒に保管しておきましょう。
ポイント③ 薬以外のものと分ける
薬を殺虫剤、防虫剤、農薬などと一緒に保管すると、薬と間違って身体に有害なものを飲み込んでしまう危険があります。「薬箱」や「お薬置き場」など薬だけを保管する専用の入れ物や場所にしまっておいてください。
処方された薬の使用期限は?
薬には使用期限があります。薬は時間が経つと分解し、成分が変質して本来の効果が得られなくなる場合や、身体に害を及ぼすような分解物が発生する可能性もあります。そのため使用期限が過ぎたものや、薬の見た目に異常があるもの(変色している、粉薬が固まっているなど)は使用してはいけません。
病院から処方された薬は、特別な指示がない限り、医師が処方した日数がその薬の使用期限です。ただし、発作時や症状が悪化した場合など必要なときだけ使用する頓服薬(とんぷくやく)は、保存状態や薬の種類によって使用期限が異なります。不明な点は薬剤師に尋ねてください。
長年薬を飲んでいると少しずつ処方日数が重複したり、飲み忘れたりして、薬が余ることがあります。
普段飲んでいる薬が余っている場合、医師や薬剤師に相談して処方する薬の日数を調整することが可能です。
薬が残ってしまうと、飲み間違いの原因になることがあります。「〇日分残っているので、〇〇日分ください」と伝えましょう。
なお、自宅に残っている薬は年に一度は整理し、古くなった薬やいつ処方されたか分からないものは捨てましょう。市販薬の場合は、薬の箱に使用期限が記載されているので、確認するようにしましょう。
薬の誤飲事故をどう防ぐ?
子どもの誤飲事故を防ぐために
子どもが誤って薬を飲んでしまうことによる中毒を防ぐため、薬は子どもの手の届かない場所に保管してください。食品の空き缶などに薬を入れておくのは、子どもが食べ物だと思って中の薬を飲んでしまう誤飲事故につながりかねないため、お勧めできません。また、食後に飲もうとテーブルに置いた薬を、わずかな隙に子どもが口に入れることがあるため、不用意に薬を置いたままにするのは避けましょう。不要な薬を捨てる際も、子どもの目に触れないように廃棄しましょう。
誤飲は子どもだけとは限らない
大人でも、薬をPTP包装シートごと飲み込んでしまう誤飲事故が発生しています。これは、PTP包装シートを1錠ずつハサミで切り離し、テレビを見たり、考え事をしたりしながら、ついうっかりPTP包装シートごと薬を飲み込んでしまうというものです。
PTP包装シートを1錠ずつ切り離すと角が鋭利なので、万が一飲み込んでしまうと喉や内臓の粘膜を傷つけてしまいます。また、内視鏡で取り除く必要があり、直ちに医療機関の受診が必要です。
PTP包装シートは、誤飲事故を防止する目的で、ミシン目はあえて縦または横の一方向のみに入れ、1錠ずつに切り離せないようにする対策がとられています。飲み忘れをなくしたいのなら、1錠ずつ切り離すよりも、一包化調剤にしてもらう方が安全で有効です。薬剤師に相談してみましょう。
薬の効果を十分に発揮させるために、適切な保管を心がけましょう。保管方法で分からないことは、薬剤師に相談してください。
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