社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

薬剤師が教える薬のキホン

2023.04.06

Vol.09

「市販薬」と「医療用医薬品」、有効性などに違いは?

病気を治療するために開発・販売されている医薬品は、大きく「市販薬」と「医療用医薬品」に分類されます。ドラッグストアなどで販売されている市販薬と、病院で処方される医療用医薬品は、それぞれ効果や安全性の面で違いはあるのでしょうか。薬の種類ごとにどういった特徴があるのか解説します。

安全性重視で販売されている市販薬

ドラックストアや薬局などで購入ができる市販薬は、「大衆薬」や「OTC医薬品」とも呼ばれます。自らの判断で購入・服用する市販薬は、利用する人の年齢も、体調、病歴などもさまざまです。多くの人が服用することを想定しているため、成分や含有量などの面において、承認審査の段階から安全性の確保を重視して審査されているのが市販薬の特徴です。
市販薬には「要指導医薬品」と「一般用医薬品」の2種類があります。

要指導医薬品とは

医療用医薬品から市販薬に転用されて市場に登場したばかりの薬のことです。市販薬として新しいうちは慎重に販売する必要があることから、店頭で薬剤師による対面での指導や情報提供を行なうことが義務付けられています。インターネットでの販売はできません。薬剤師が症状に合った薬を勧めることができるよう、購入できるのは服用する本人だけです。
原則として3年間の販売後、安全性が確認されれば一般用医薬品に切り替わります。

薬剤師が対面で購入者に指導をしているイラスト
対面での薬剤師の指導が必要

一般用医薬品とは

一般用医薬品は副作用などのリスクに応じて3種類に分かれており、販売方法や患者さんへの情報提供の必要性などが異なります。すべての一般用医薬品はドラックストアや薬局での対面販売だけでなく、インターネットで販売ができます。ネット販売を行なうにあたって実店舗と同様に薬剤師や登録販売者が情報提供を行なったり、相談に応じたりすることが義務付けられています。

PCを使い、インターネットで薬を購入する人のイラスト
インターネットでの購入が可能

一般用医薬品の3種類で何が異なる?

一般用医薬品は、リスクが高い順に第1類~第3類の3種類に分かれています。それぞれの違いを以下で見ていきましょう。

第1類医薬品
一般用医薬品としての使用実績が少なく、安全性の面で注意が必要な成分を含んでいる医薬品です。効果が高い一方、副作用で健康被害が出る可能性があるため、注意が必要です。店頭では自由に手に取れない場所に保管してあり、購入する際は薬剤師の説明を聞く必要があります。
例:一部の解熱鎮痛剤や胃腸薬、毛髪剤、ニコチン貼付剤など

第2類医薬品
第1類に比べるとリスクが下がるものの、それでも副作用や相互作用などの面で注意を要する医薬品です。薬剤師もしくは講習を受けた登録販売者から購入ができます。利用者への説明は「努力義務」とされています。
例:主なかぜ薬、解熱鎮痛剤など
なお、第2類医薬品の中でも健康被害のリスクが高いものや依存性のある成分を含んだものは「指定第2類医薬品」に定められています。

第3類医薬品
日常生活に支障が出るような副作用などのリスクはないものの、調子が悪くなる可能性があるため多少の注意が必要な医薬品です。利用者への説明は特に必要がありません。
例:整腸剤、一部のビタミン剤など

一般用医薬品の分類とそれぞれの特徴

第1類医薬品 第2類医薬品 第3類医薬品
副作用
対応できる専門家 薬剤師 薬剤師または
登録販売者
薬剤師または
登録販売者
薬剤師からの情報提供 必須 努力義務 不要
(希望があれば対応)
薬の例 一部の解熱鎮痛剤、胃腸薬、毛髪剤、ニコチン貼付剤など 主なかぜ薬、解熱鎮痛剤
など
整腸剤、一部のビタミン剤
など
ネット販売

有効性は高いが副作用には注意したい医療用医薬品

ここまで市販薬について見てきましたが、一方の医療用医薬品にはどういった特徴があるでしょうか。
医療用医薬品は、患者さんごとの病気や症状、体質などを踏まえて、医師が処方箋を出し、その処方箋をもとに薬剤師が調剤する医薬品です。診察時の患者さんの病状に適した薬の種類や量が処方されています。そのため薬の服用に際しては、医師や薬剤師の指示に従うことが大切です。また、他の人が服用するのは危険です。

医療用医薬品の特徴として、市販薬に比べて高い有効性が期待できますが、副作用が出る可能性もあります。しかしながら、医師が診断して処方し、さらに薬剤師もしっかりとチェックしているので、正しく服用していれば問題はありません。

医師が患者に薬を説明して、その薬を薬剤師が調剤し処方をしているイラスト
医療用医薬品は医師が診察して処方し、薬剤師が処方箋に基づいて薬を調剤する

医療用医薬品だけでなく市販薬を購入して使用する場合も、購入先の薬剤師などに使い方や注意点など気になることがあれば尋ねてみるとよいでしょう。
そして市販薬を服用して数日経っても症状が改善されない場合は、病院を受診しましょう。場合によっては新たに医療用医薬品を処方してもらうといったことも症状の改善には有効です。

市販薬であれ医療用医薬品であれ、薬剤師や登録販売者、医師といった専門家に相談して、自分の体調やリスクを考慮した最適な薬を選択できればいいですね。

※掲載している情報および解説者の所属・役職は、本ページ公開当時のものです。

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