2023.06.05
Vol.10
セルフメディケーションの実践方法や税制について
毎日を健康に過ごしていくために注目されているのが「セルフメディケーション」です。自分の身体を自分で守り、健康を管理するという考え方です。セルフメディケーションの実践方法や気をつけたいポイント、薬を購入する際の税制まで、分かりやすく解説します。
三条病院 薬剤科 薬剤長
近藤 一博
セルフメディケーションとは?
世界保健機関(WHO)はセルフメディケーションについて「自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分自身で手当てすること」と、定義しています。 セルフメディケーションに意識して取り組むことで、医療機関の受診が減って医療費の削減につながるだけでなく、医療機関を受診する機会の少ない人も自身の身体に日々目を向けることで、健康の維持や生活習慣病の予防につながります。
セルフメディケーションの実践方法としては、適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠や休養、血圧・体重・体温の測定といったことを心がけて、体調管理を継続することが基本となります。
加えて、市販薬(OTC医薬品)を利用し、風邪や頭痛、けがなど軽度な身体の不調を自分自身でケアすることも大切です。OTC医薬品は、後述するように所得控除(所得税を計算する際に所得から一定の金額を差し引くこと)の対象にもなります。
取り組むときに気をつけたいポイント
セルフメディケーションで気をつけたいポイントとして、次の2つが挙げられます。
ポイント① OTC医薬品の使用時は用量・用法で
OTC医薬品には効き目が強いものがあります。間違った使い方をすると副作用が起こりやすくなるため、症状に合わせて正しい用量・用法で薬を使用することが大切です。
ポイント② 処方薬やサプリメントとの飲み合わせに注意
病院で処方された薬やサプリメントを服用している場合、OTC医薬品との飲み合わせに注意する必要があります。
上記の2つのポイントに注意する上でお勧めなのが、「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」を持つことです。自分自身で手当てするといっても難しいので、相談しやすいかかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師を通じて、症状に合った薬や、薬の飲み合わせ、薬の正しい使い方などについてアドバイスやサポートを受けることができます。症状によっては医療機関を受診すべきかどうか提案もしてくれます。
また、お薬手帳を活用することで、より安心・安全な薬の選択につながります。お薬手帳は、複数の医療機関の受診やセルフメディケーションの際に飲み合わせの確認・重複投与の防止などに活用できるだけでなく、災害時に自身が使用している薬の確認ができます。もし何冊かバラバラに保管しているようであれば、1冊にまとめておくことをお勧めします。
セルフメディケーション税制について押さえよう
各種健康診断や予防接種を受け、健康や予防への取り組みを行なっている場合、指定されたOTC医薬品を購入することで、セルフメディケーション税制による所得控除が受けられます。
従来からの医療費控除は、医療費(受診やOTC医薬品購入費用も含む)が10万円を超えないと控除の対象となりません。しかし、セルフメディケーション税制は対象のOTC医薬品の購入費用が1万2000円を超えれば適用され、超えた金額が所得控除の対象となります。なお、確定申告する人と生計が同じ家族それぞれの購入費用をまとめて1万2000円を超えれば対象となります。ただし、従来の医療費控除との併用はできません。
セルフメディケーション税制による所得控除の対象商品には、パッケージにマークが付いています。ただ、新たに追加された商品やスイッチOTC医薬品以外の商品には、対象商品であってもマークが付いていない場合もありますので、お店で確認してください。
参考サイト
厚生労働省 セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html
※掲載している情報および解説者の所属・役職は、本ページ公開当時のものです。