社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

薬剤師が教える薬のキホン

2023.08.07

Vol.11

処方箋に「使用期間」があるのを知っていますか?

家庭や仕事の事情で、受診した日に薬局で薬を受け取ることができないこともあると思います。うっかり忘れてしまい、後日慌てて薬局に処方箋を提出したところ「この処方箋は使用期間を過ぎているため調剤できません」と断られた経験のある人もいるかもしれません。そこで今回は処方箋の使用期間についての考え方や注意点、対処法について取り上げます。

処方箋の使用期間とは

処方箋の使用期間は「保険医療機関及び保険医療養担当規則」という国の決まりで、原則4日間と決まっています。ただ、長期の旅行など特殊な事情がある場合には、この期間を延長するなどの変更ができると同規則で定められています。
実際、処方箋の使用期間の欄(下図の赤線部分)の右側をよく見ると、「特に記載のある場合を除き、交付の日を含めて4日以内に保険薬局に提出すること。」と書かれています。しかし、文字が極端に小さいこともあって、この記載が意識されることは少ないようです。

「処方箋の使用期間」という欄を赤い枠で囲ってある処方箋の画像

処方箋の使用期間が4日間と聞いて「なぜそんなに短いの?」と疑問に思う人は少なくないと思います。慢性の病気で安定した状態における処方であれば使用期間が多少長くても問題にならないかもしれません。しかし病気によっては処方箋が発行された日から日数が経過すると、病状が変化してしまい、期待した治療効果を得られないことが懸念されます。このことを踏まえ「4日間」と定められているようです。

使用期間「4日間」の解釈

処方箋の使用期間「4日間」を解釈する際、以下の点に注意が必要となります。

  • 処方箋の使用期間は交付日を含めて4日間以内
  • 4日間には土日や祝日も含まれる


例えば、翌週の月曜日が祝日の場合、金曜日に交付された処方箋の実質的な提出期間は、金曜日と土曜日の2日間しかないことになります(かかりつけの薬局が日・祝日休業の場合)。薬の受け取りを後回しにしていると、使用期間を過ぎてしまう可能性もあるため気をつけましょう。

処方箋が交付された日を1日目として、3日目、4日目が休日や祝日の場合、提出できる日は1日目と2日目になるという事が示してある図

年末年始やGWの使用期間は?

年末年始やゴールデンウィークなどの大型連休であっても使用期間4日の解釈に変わりはないので、注意が必要です。実際、大型連休の後は処方箋の再発行依頼が増える傾向があるようです。日祝日や年末年始の調剤は、調剤にかかる費用を算出する「調剤報酬点数」の加算が認められており、患者さんの保険給付割合に応じて40〜120円ほどの自己負担が追加で発生します。

使用期間が過ぎてしまったときは

使用期間を過ぎた処方箋は効力を失ったことになり、薬局で調剤を受けることができなくなります。
こうした場合、処方元の医療機関を再度受診して、処方箋を再発行してもらう必要があります。ただ、再発行にかかる費用は保険適用とならないため全額自己負担になってしまいます。
なお、調剤薬局で支払う費用については保険が適用されます。

使用期間切れを防ぐために

先述のとおり、長期の旅行などの特殊な事情がある場合には、処方箋の使用期間を延長することが可能です。ただし、使用期間は処方箋を交付する際に医師が判断することになっています。処方箋が交付されてしまうと、使用期間は変更できないため、受診の際に医師としっかり相談しておくことが大切です。

長期の旅行などの場合は受診時に医師に相談する
長期の旅行などの場合は受診時に医師に相談する

使用期間が切れないように、日曜日や祝日に薬局に行くこともあるかもしれません。その際、かかりつけの薬局が日祝日で休業の場合は、休日でも対応できる薬局を探して調剤を受けることになります。
休日に営業している薬局については、地域(県・市町村・区)の薬剤師会のホームページに掲載されていることがありますので確認してみてください。
かかりつけ薬局以外で調剤を受ける場合、お薬手帳を見せることで、調剤に必要な情報のやり取りがスムーズになります。ぜひ活用するようにしてください。

参考
保険医療機関及び保険医療養担当規則 第二十条 第三号イ

※掲載している情報および解説者の所属・役職は、本ページ公開当時のものです。

Vol.10 セルフメディケーションの実践方法や税制について Vol.12 抗菌薬の不適切な服用で生じる「薬剤耐性(AMR)」とは?

トピックス Topics