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カラダと栄養お菓子な話 第2回 
~糖質と血糖値の関係は!?~

前回、市販のお菓子は意外に高カロリーで糖質もたっぷりというお話をしました。この糖質、実はカロリーだけでなく、血糖値の変動にも大きく関与しているのです。そこで、シリーズ2回目は、糖質が血糖値に及ぼす影響を詳しく解説。体内ではいったい何が起きているのでしょうか? しっかり学んで、楽しいおやつタイムにしましょう。

お菓子で血糖値が急上昇!?

 お菓子に限らず、人間は食事をすると「血糖値(血液内のブドウ糖濃度)」が上がります。食べた物は身体に吸収され、ブドウ糖となって血液中に出てくるため、食後の血糖値は上昇します。しかし、血糖値が高い状態が続くと血管はもろくなり傷んでしまいます。そこで、血糖値が上がると、身体が値を下げようと反応し、すい臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。血液中のブドウ糖(血糖)は、このインスリンの働きかけによって細胞に取り込まれ、そこで初めてエネルギーとして利用・貯蔵されるのです。こうして、一時的に上がった血糖値は、数時間後には食事前の値に戻ります。

食事と血糖値の関係
食事と血糖値の関係

 ただ、食べた物が血糖に変わる割合と速度は、食品の栄養素によって異なります。下のグラフが示すように、栄養素が血糖に変わる割合と速度は、糖質がいちばん高くて速い。つまり、糖質をたっぷり含んだお菓子は、血糖値を上昇させる大きな要因なのです。

栄養素が血糖に変わる割合と速度
食事と血糖値の関係

血糖値の許容量オーバーが肥満の原因に

 では、血糖値が急上昇すると何が問題なのでしょう? 実は、インスリンには、エネルギーとして利用できなかった分のブドウ糖を脂肪細胞に蓄える働きがあります。血糖値の急上昇に伴い大量分泌されたインスリンが懸命に働いた結果、余ったブドウ糖は脂肪に変換されます。これが肥満の原因となります。

血糖値にはお菓子を食べる時間や量も影響

 お菓子は血糖値を急上昇させるだけではありません。3食の食事以外に糖質たっぷりのお菓子を食べると、血糖値が下がる時間がなくなり、これまたインスリンを作るすい臓への負荷が増えます。そのため、血糖変動への影響を意識して、食べる時間や量を考えることも大切になります。また、空腹時にいきなり甘いものを食べるより、食事などである程度血糖値が上がっている状態でお菓子を取り入れるほうが、急激な上昇は抑えられます。また、食後だと空腹感が少なく、食べる量も少量に抑えられるかもしれません。どちらかといえば、食間に食べる「3時のおやつ」より、「食後の少量デザート」のほうが血糖値への影響は少ないといえます。

お菓子を食べる前に気をつけたいこと

 血糖値の激しい上下動を避けるためのポイントをご紹介します。

1. 食べる時間とタイミングを考える
寝る前は止めて、エネルギーを消費しやすい午前中や昼間、運動前に。
2. 「栄養成分表示」を確認し、カロリーや糖質の少ない物を選ぶ
市販のお菓子には「栄養成分表示」が記載されているので、しっかりチェック。
3. お腹がすいているときに買いに行かない、買いだめしない
「空腹は最高の調味料」ともいわれるように、お腹がすいているとなんでもおいしそうに見えますが、空腹状態のほうが糖分を取り込みやすいため、血糖値が上がりやすくなります。
4. 食べる分だけ取り分ける
大袋で出すと、ついつい食べ過ぎてしまうので要注意。小袋のタイプを選択するのもひとつ。
5. ゆっくり時間をかけ楽しくおいしく食べる
よく噛み、ゆっくり時間をかけて食べましょう。血糖値の上昇には、食べるスピードも大きく関係します。
6. マイルールを決める
毎日、無意識的に食べるのではなく、決まった時間やご褒美デーを作りましょう。
7. 指示エネルギーを超えない
一日に摂取してよいカロリーを超えないよう十分な自己管理を。

滋賀県病院 管理栄養士 松尾 歩実

松尾 歩実
滋賀県病院
栄養科 管理栄養士

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