済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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空気の通り道である気管支の末端や、気管支の周囲に存在する酸素と二酸化炭素のガス交換を行なう肺胞に、細菌やウイルスなどの病原体が感染して炎症を起こしたものを、肺炎といいます。
病変の起こる場所によって、せきや痰の強い気管支肺炎(きかんしはいえん)と、突然の高熱や胸痛で発症する大葉性肺炎(たいようせいはいえん)に分けられます。気管支肺炎は、気管支の炎症を伴うことから、せき・痰の症状が最初からみられ、発熱が加わってくる場合が多い傾向があります。一方、大葉性肺炎は、気管支肺炎にみられるせき・痰の前駆症状なく、突然の高熱をきたし、特に高齢者では意識障害や歩行困難などの症状を起こすことも多いです。病原体の種類によって、気管支肺炎を起こしやすい病原体と、大葉性肺炎を起こしやすい病原体があります。
気管支肺炎を引き起こしやすい病原体の代表は、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ肺炎の原因)と、さまざまなウイルス(ウイルス性肺炎の原因)です。そして、大葉性肺炎を引き起こしやすい病原体の代表は、ワクチン接種で盛んにメディアにも取り上げられる肺炎球菌です。
いわゆる”風邪”は、かぜ症候群と言われる諸症状(くしゃみ、鼻水、せき、痰、咽頭痛、37℃台の微熱など)からなり、80~90%はウイルスが原因です。かぜ症候群は、上気道(鼻や喉の部分)感染症である急性上気道炎に対応し、上気道に炎症が起こります。高熱、悪寒(寒気)、全身倦怠感(全身のだるさ)、筋肉痛などの全身症状は一般的に少なく、同様にウイルスで起こるインフルエンザとの違いでもあります。
一方、肺炎では38℃を超える発熱が数日間に渡って持続し、悪寒や全身倦怠感(全身のだるさ)に加え、呼吸困難感・息切れを伴う場合もあります。せき・痰がある場合には、色のついた痰(黄色、緑色、鉄さび色)もみられます。高齢者では、高熱が目立たず、食欲低下、活動性の低下、歩行困難、意識障害などの症状で発症することもあり、特徴的な症状がないために、周囲に気づかれずに悪化した状況で搬送されることも少なくありません。
肺炎は風邪とは炎症を起こす場所が異なります。しかし、上気道感染症から二次感染を起こすことで、気管支炎や気管支肺炎などに進展することもありますので注意が必要です。
病名 | 炎症部位 | 症状 | 熱 |
---|---|---|---|
風邪 | 上気道 | くしゃみ、鼻水、せき、痰、咽頭痛など | 37℃台の微熱 |
インフルエンザ | 全身感染 | 悪寒、関節痛、筋肉痛、腹部症状(B型) | 38℃以上の高熱(ワクチン接種者では微熱の場合もある) |
肺炎 | 肺胞 | 悪寒、全身倦怠感、呼吸困難感、息切れ、色のついた痰(黄色、緑色、鉄さび色) | 38℃以上の高熱 |
風邪、インフルエンザ、肺炎の主な原因はウイルスや細菌への感染です。感染しないための予防を行ないましょう。
・外出から帰宅した際の手洗い、うがいをこまめに行ない、冬期などの風邪やインフルエンザの流行期には、人混みを避け、人混みに出る際にはマスク着用を行なうことも考えてください。
・空気の乾燥は、ウイルスの増殖しやすい環境であり、冬期の風邪やインフルエンザの流行に関わっています。室内空気の湿度を50%以上に維持するために、加湿器を使用したり、洗濯物を室内干しにするなどの湿度管理も大事です。
・食後や就寝前の歯磨きにより口腔内を清潔に保つことで、口腔内の雑菌による風邪やインフルエンザ、肺炎予防につながります。
規則正しい生活や適度な運動を行ない、喫煙者は禁煙をすることで、からだの抵抗力を高めましょう。
肺炎球菌は代表的肺炎の病原体であり、重症肺炎を起こす菌の代表です。高齢者の肺炎球菌ワクチン接種は大事な予防法です。予防接種を受けるタイミングは、インフルエンザ流行期に入る前がよいでしょう。
喫煙者は、肺炎にかかるリスクが高いことが分かっています。
厚生労働省の調査では、日本人の死亡原因の第3位が肺炎であり、肺炎による死亡者の95%が65歳以上の高齢者です。高齢者肺炎は、嚥下機能(だ液や食べ物などを飲み込む働き)の低下から、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)が多くを占めています。食事の際のムセがある場合は、誤嚥性肺炎”要注意”です。かかりつけ医に相談してください。
解説:一門 和哉
済生会熊本病院
呼吸器内科部長