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血便 血便

血便は、消化管(食道から肛門まで)のどこかで出血したことが原因で起こる症状です。出血量が少ない場合は肉眼では分かりません(便潜血検査なら見つけられます)。肉眼で見て分かるような血便の場合は、出血量が多い可能性があります。

血便は、大きく黒い「黒色便(タール様便)」と、赤色~暗赤色の「鮮血便」に分けられます。黒色便は上部消化管(食道から小腸の十二指腸まで)からの、鮮血便は下部消化管(小腸の空腸から肛門まで)からの出血であることが多いですが、例外もあるので医師に相談することが必要です。

また、薬剤の影響で便の色が変わったり(鉄剤で黒色、一部の抗菌薬で赤色など)、副作用で消化管から出血したりすることもあります(血液をサラサラにする抗凝固薬や、非ステロイド性抗炎症薬など)。飲食物(トマトやニンジンなど)の色素によって便が赤っぽく見えることもあります。

いずれにしても、目で見て分かるくらいの血便が出た場合は、ほかの症状の有無にかかわらず、なるべく早く病院(消化器科または内科)を受診してください。

どんな人に、どんなときに現れるか

血便は年齢が高くなるほど増える傾向があります。成人の場合、上部消化管からの出血(多くは黒色便)では胃や十二指腸の潰瘍がある場合が多いのですが、悪性腫瘍(がん)が原因のことも少なくありません。
下部消化管からの出血(多くは鮮血便)でも、大腸憩室からの出血、虚血性大腸炎、が多いとされますが、大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患(クローン病潰瘍性大腸炎)、感染性胃腸炎による血便もあり得ます。
頻度はそれほど高くありませんが、上部消化管・下部消化管ともに、内視鏡による精密検査が必要となることが多いです。

子どもの場合、血便が出る原因は幅広く、細菌性胃腸炎や腸重積症、十二指腸潰瘍、血液凝固異常、消化管異物などさまざまです。悪性の病気は少ないのですが、緊急を要するものもありますので、注意が必要です。

このように原因はいろいろありますが、血便が出ているということは、消化管から少なからず出血しているということです。出血が多くなると貧血症状(めまい、立ちくらみ、息切れ動悸頭痛など)や出血性ショック(落ち着きがなく興奮、血圧低下、脈や呼吸数の異常、意識低下、失神など)に陥ることもあります。上記の症状に当てはまるものがある場合には、緊急の内視鏡検査などで出血している場所を確かめて止血したり、輸血したりする処置が必要になることもあるので、ためらわずに病院を受診してください。

どんな病気が関係しているか

「血便」の症状が現れる主な病気の中で、発症頻度の高いもの、特徴的なもの、注意が必要なものをとりあげました。病気についてさらに知りたい場合はリンク先をご参照ください。

症状とその特徴

説明

疑われる主な病気

・黒色便

・みぞおちの痛み、不快感

・胸やけ、げっぷ

・食後(胃潰瘍)/空腹時(十二指腸潰瘍)の上腹部痛

ピロリ菌の感染や非ステロイド性抗炎症薬などにより、粘膜がただれ、潰瘍ができて出血する

胃潰瘍

十二指腸潰瘍

・鮮血便

・腹痛はない

腸の壁に小さい袋状の凹み空間(憩室)ができ、そこから出血する

大腸憩室出血

・鮮血便

腹痛が起きた後に血便

大腸に血液が十分に届かず、潰瘍や壊死を起こした部分から出血する

虚血性大腸炎

・鮮血便

・痛みはないことが多い

肛門の内側にいぼのような出っ張りができ、そこから出血する

内痔核(いぼ痔)

・鮮血便

・血の混じった下痢

発熱頭痛吐き気など、風邪のような症状

細菌やウイルス、寄生虫の感染により腸で炎症が起き、出血する

感染性胃腸炎(ノロウイルスカンピロバクターなど)

チェックポイント

(1)次のような症状の有無を確認する

  • 血便に気付いた時期や状況
  • 出血量(トイレットペーパーに少し付くぐらい、便器が赤くなるくらいなど)
  • 便の状態(普通便、軟便、水様便)
    ※便の写真を撮っておくと診察に役立ちます
  • 血便の回数
  • 血便のほかに出ている症状(腹痛発熱嘔吐、貧血症状など)
  • 脈や呼吸数の異常、顔面や手足の蒼白、意識低下などの緊急性が高い症状があるか
    ※ある場合は救急車を呼んでください

(2)次のような環境を確認する

  • 飲んでいる薬やサプリメントの種類
  • これまでに消化管の潰瘍や肝臓の病気を指摘されていないか
  • 最近、内視鏡検査を受けたことがあるか
  • 健康診断などで生活習慣病(糖尿病脂質異常症高血圧)やピロリ菌感染を指摘されていないか
  • 周囲に同じような症状を起こしている人はいるか
  • 最近の食生活(赤い食べ物を大量に食べたなど)


泉 学

解説:泉 学
済生会宇都宮病院
内科系診療部長補佐・総合診療科 主任診療科長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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