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2014.02.20
ノロウイルスは、感染すると激しい嘔吐・下痢を起こすウイルスです。21世紀になってから命名され、「ノロウイルス」という名前が確定しました。ただし、このウイルス自体は昔から流行を繰り返してきたものであり、新しいウイルスではありません。毎年、11月~翌年4月ごろまで流行する感染性胃腸炎の原因は多くの場合、ノロウイルスの感染だといわれています。
生の牡蠣を食べるとノロウイルスに感染することがあるため、”食中毒の原因”というイメージが強いかもしれません。しかし、実際には下痢便や吐いた物を介して、人から人へと感染することの方がはるかに多いことが特徴です。
感染力が非常に強いため、保育園や幼稚園、小学校、高齢者施設や病院などでは集団感染がよく起きています。
ノロウイルスに感染すると、1~2日間後に、1日数回~10回以上ものひどい嘔吐・下痢が起こります。通常、便に血液は混じりません。この症状は、十数時間から数日ほど続きます。ノロウイルスは空気感染はしませんが、嘔吐した際に飛び散った飛沫により感染するため、嘔吐がある間は保育園や幼稚園、学校、会社などは休むことが理想です。
ウイルスによる感染症なので、抗生物質は効果がありません。そのため、吐き気止めや整腸剤などで症状を緩和しながら、安静にして症状が治まるのを待ちます。ただし、下痢止めはウイルスの排泄を遅らせてしまう可能性があるので、通常は使わないほうがよいとされています。
他の病気がなければ、入院などの治療が必要とされることはあまり多くなく、自然に治ります。ただし、小さな子どもや高齢者は、重症化しやすいため、注意しましょう。
胃腸炎になったら、安静にして症状が治まるのを待ちましょう。このとき、脱水を防ぐために、嘔吐や下痢によって失われた水分と塩分をバランスよく補うことが大切です。水やお茶だけではなく、水分・塩分・糖分がバランスよく含まれている経口補水液もお勧めします。
ノロウイルスは水拭きや逆性石けん、アルコールなどの消毒液では効果があまりありません。したがって、例えば床に吐いた物を水拭きだけで処理してしまうと、乾燥後に残ったウイルスの粒子が舞い上がり、数日にわたってその場所に近づいた人が吸いこんで感染する場合があります。
そのため、塩素系消毒液や加熱による消毒を行なうことが重要になります。
消毒する際は、以下の点に気を付けましょう。
・床や家具などは、家庭用の塩素系漂白剤を50~200倍程度に薄めたもので拭き取る。
・吐いた物がついた衣類などは、洗濯機に入れる前に煮沸消毒をすることが理想。
・処理をするときは、マスクと手袋をして行なう。眼鏡をしていない人は、できればゴーグルを着けるとよい。処理をする間、他の人は3メートル以内に近づかないようにする。
ノロウイルスは毎冬のように流行します。
ノロウイルスが付いた手で触ったドアノブや家具、調理した食品などには、何日間も感染力を保ったウイルスが付いたままになっています。このウイルスが他の人の口に入ることで、感染が広がってしまいます。
身近に発症している患者さんがいなくても、感染しているにもかかわらず症状が出ていないだけの人がいるかもしれません。症状がなくても他の人にウイルスを感染させる可能性はあるので、注意が必要です。
そのため、特に流行時期は、手洗いをしっかりとすることが大切です。石けんを使い、洗面器などに溜めた水ではなく、水道から流れる水を使ってきちんと洗い流しましょう。
感染力が非常に強いウイルスであるため、完全に感染を予防することは難しいですが、流水・石けんによる手洗いの徹底が対策としては最重要です。
解説:安井 良則
中津病院
臨床教育部長・感染管理室室長
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