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2014.02.12
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって発症します。毎年、冬になると患者さんが多くなり、1月の第4週・第5週ごろに流行のピークを迎えることが多いです。
主な感染経路は、くしゃみ・せき・会話などです。感染者の口から発せられたウイルスを含んだ飛沫を吸い込み、ウイルスが鼻や喉の粘膜に付着することによって起こる飛沫感染です。症状として、感染してから1~5日後に突然38℃以上の発熱と、頭痛や関節痛、筋肉痛などの体の痛みが起こり、さらに鼻汁、せき、のどの痛みなどが生じます。
発症して1週間ほどで自然に治りますが、肺炎や脳症などの重い合併症を起こし、亡くなってしまうこともあります。
肺炎の原因は、従来の季節性インフルエンザと、2009年に「新型インフルエンザ」として流行した「インフルエンザA(H1N1)pdm2009」(以下「H1N1pdm型」)で傾向が違います。従来型では、高齢者や他の慢性疾患がある人などが、インフルエンザによって体力が低下したところに、他の肺炎球菌などの細菌に感染して肺炎になることが多いとされています(二次性の細菌性肺炎)。一方「H1N1pdm型」では、インフルエンザウイルス自体による肺炎が起こりやすいことが分かっており、特に小さな子どもは注意が必要だと言われています。
患者さんは、せきやくしゃみ、会話によりウイルスを排出しています。そのため、学校や会社を休むなど、患者さんを集団から隔離する対策がとられます。
ただし、ウイルスに感染した人が全員発症するわけではなく、症状が出なかったり、ごく軽いままで終わる人もいるので、感染したことに気づかず、ウイルスを保有した人と、同じ空間で過ごしてしまうことがあります。そのため、ウイルスを完全に予防することは難しいといえます。
インフルエンザを発症したら、他の人にうつさないように保育園や学校、会社などは休みましょう。食事・就寝は家族とは別の部屋で行い、安静に過ごします。タオルは共用せず、看病をする人はマスクをつけましょう。
抗インフルエンザウイルス薬は、発症後早いうちに飲むことで重症化するのを防ぎ、早く症状を治められます。そのため、発症したらすぐに病院を受診するとよいでしょう。発症から6時間以内の場合は、インフルエンザの感染の有無がうまく判定できないこともありますが、急な高熱などの症状や、家族や友人に感染者がいるなどの状況から判断できることも多いため、医師が必要だと判断した場合は治療を開始することができます。
ただ、近年は、抗インフルエンザウイルス薬に対して耐性のあるウイルスも出てきています。2013/2014年シーズンでは、H1N1pdm型ウイルスのうち、「タミフル」と「ラピアクタ」という抗インフルエンザウイルス薬に耐性のあるウイルスが、北海道、山形県、神奈川県、三重県、大阪府など、国内の各地域で検出されています。
そのため、どのタイプが流行しているかが、薬を処方してもらう際に重要となります。受診してウイルスのタイプを判定してもらい、耐性ウイルスの可能性がある場合は、「リレンザ」や「イナビル」といった耐性ウイルスにも効く薬を処方してもらいましょう。
インフルエンザワクチンを接種すると、インフルエンザの発症率・重症化率を下げることができます。
ワクチンは、その年に流行する可能性のあるウイルスの抗原性を予想して製造されますが、ウイルスの抗原性が変化すると、効果が少し落ちてしまう場合があります。しかし、特に乳幼児や高齢者、他の慢性疾患のある人など、インフルエンザにかかると重症になる可能性が高い人は、毎年接種しておくと安心です。
ワクチンは接種してから効果が出るまでに2週間ほどかかります。そのため、流行が本格化する1月に合わせて、できれば12月初旬までに、遅くとも12月中旬までには接種しておきましょう。
インフルエンザが流行する時期には、患者さんのせきやくしゃみ、吐いている息から出ているウイルスを吸いこまないよう、マスクをすることが効果的な予防法です。ただし、マスクは鼻まできちんと覆うように着けなければ効果がないので、注意しましょう。
また、エチケットとして、人に向かってせきやくしゃみをしないようにお互いに気をつけましょう。さらに、マスクはせきやくしゃみをして、ウイルスを飛沫として排出している人が装着する方がより効果が高いです。
ただし、実はインフルエンザの感染は、”通りすがりの人”よりも”知り合い”からもらうことの方がはるかに多いといわれています。5分間対面して会話をすると、1回せきをあびるのと同じくらいの飛沫にさらされることになるので、注意が必要です。
インフルエンザウイルスは、患者さんの体の外に出ると数時間以内で死んでしまいます。そのため、患者さんの触った場所などから感染することはあまり多くありません。
しかし、念のため患者さんの唾液などが付いた場所は、アルコールなどで消毒するとよいでしょう。また、手洗いをしっかりしておくことが大切です。
解説:安井 良則
中津病院
臨床教育部長・感染管理室室長
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