長引くせき
この症状が現れる主な病気 24件
せき(咳)は、気道内にある異物を排出するために起こる、呼吸器の防御反応です。誰しも風邪を引いたときに、鼻汁やのどの痛みなどと一緒にせきを経験します。この場合は、十分な栄養や睡眠を取って養生すれば、3週間以内におさまることがほとんどです。
しかし、なかには3週間以上続く、長引くせきに苦しめられる人もいます。この場合は、ただの風邪ではなく、ほかの病気が原因になっている可能性があるので、医療機関(呼吸器科、内科)を受診してください。
せきはその長さによって3つに分けられます。
- 急性のせき(3週間未満におさまる)
- 遷延性のせき(3~8週間でおさまる)
- 慢性のせき(8週間以上続く)
例外はありますが、基本的に急性~遷延性ではウイルスや細菌の感染症によるものが多く、遷延性~慢性になると感染症以外の原因が多くなってくると考えられています。
どんな人に、どんなときに現れるか
長引くせきでは、「呼吸時にゼーゼー、ヒューヒュー音がしているか(喘鳴)」、「せきとともに痰も出ているか」が診断のヒントとなります。さらに詳細な問診や、X線検査などを組み合わせて鑑別が進められます。
喘鳴があって痰も出ている場合は、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の可能性があります。喘鳴がなくて痰が出ている場合で、鼻の症状もあれば、副鼻腔炎などの影響でのどに鼻水や膿が流れ込むために長引くせきが出ている可能性があります。また、心不全や肺がんなどの影響によることもあります。
痰が出ていない乾いたせきの場合も、さまざまな原因が考えられます。喘鳴はなく長引くせきだけが出るせき喘息や、特定の誘因条件(気温、喫煙、運動など)があると出るアトピー性咳嗽、百日咳菌やマイコプラズマの感染などがあります。意外なものとしては、胃食道逆流症(逆流性食道炎)で酸の逆流の刺激によりせきが出ることや、精神的ストレスによる心因性咳嗽(がいそう)、薬剤(降圧薬など)の副作用としてのせきなどがあります。非常にまれではありますが、耳炎からせきが起こることもあります。
どんな病気が関係しているか
「長引くせき」の症状が現れる主な病気の中で、発症頻度の高いもの、特徴的なもの、注意が必要なものをとりあげました。病気についてさらに知りたい場合はリンク先をご参照ください。
症状とその特徴 |
説明 |
疑われる主な病気 |
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・長引くせき ・呼吸困難(吐きにくい) ・喘鳴(ゼーゼー音) ・痰 |
気管に慢性的な炎症が引き起こされ、ちょっとした刺激で気道が狭くなり、せきや呼吸困難が出る。夜間に悪化 |
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・長引くせき |
気管支喘息の亜型または前段階。痰や喘鳴、呼吸困難は伴わないが、乾いたせきが長引く |
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・長引くせき ・痰 ・呼吸困難(身体を動かすと息切れ) |
長年の喫煙により気管や肺が傷つき、慢性の炎症が起きている。痰が多く出て、せきも長引く |
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・長引くせき ・鼻水、鼻づまり ・口臭 |
鼻の奥にある空洞に細菌が感染し、膿がたまる。鼻水や膿がのどに流れてせきが出る。風邪を引いた後になりやすい |
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・長引くせき ・胸やけ(食後、横になったときに悪化する) |
胃酸がのどに逆流することで粘膜に炎症を起こす。これが刺激となって長引くせきが出る |
チェックポイント
(1)次のような症状の有無を確認する
- せきはどのくらい続いているか
- 痰も出る湿ったせきか、痰が出ない乾いたせきか
- 呼吸時にゼーゼー、ヒューヒュー音がするか
- せきが出やすい時間帯やきっかけがあるか
- どんな痰が出ているか(色)
- そのほか、気になる症状はあるか(息切れ、胸やけ、胸痛、鼻づまりなど)
(2)次のような環境を確認する
- せきが出始まる前に風邪などを引いたか
- 周りの人に同じような症状が出ていないか
- 喫煙をしているか(喫煙していたことがあるか)
- 気管や肺に刺激を与えるような原因に思い当たるか(排気ガス、粉塵など)
- 現在、患っている病気はあるか
- 飲んでいる薬やサプリメントの種類
- 精神的なストレスを抱えていないか
解説:泉 学
済生会宇都宮病院
内科系診療部長補佐・総合診療科 主任診療科長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。