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2017.05.24
1週間程度続く発熱と激しい咳・鼻づまりなどの症状、全身性の発疹、ひどいぐったり感を伴う病気です。初めの2日程度は普通の風邪症状と変わらず、半日くらい熱が下がった後に再び高熱となります。奥歯のあたりの頬粘膜に白い付着物(Koplik斑)が見え、全身性の発疹が出現し、目の充血、激しい咳など、重症感が見られるようになります。発疹は顔→体→四肢と広がり、まだらな発赤が癒合(発赤同士がくっつくこと)して一面真っ赤となり、だんだん茶色くなっていきます。熱が下がってもしばらくは発疹の跡の色素沈着が残ります。血液の中のリンパ球が減った状態が3週間程度続くため、解熱した後でも肺炎などの細菌感染の併発に注意が必要です。
麻疹ワクチンのなかった時代は0歳代後半~幼児期に必ずかかり、1000人に1人は死者が出ていました。1969年に麻疹ワクチンが登場し、2006年から1歳時と5~6歳時に2回ワクチンを接種するようになってからはほとんど患者さんを見なくなりましたが、最近になり10代後半から成人の麻疹患者が散見されています。ワクチン未接種、もしくは1回しかワクチンを接種していない人が海外旅行中に感染し、日本に戻ってから発症、そしてその周りの人々に感染が広がっていくケースが多いようです。潜伏期間は11日前後です。
ワクチン未接種の人が麻疹にかかった場合は、「医学解説」で述べたような典型例の症状が見られます。初期の風邪症状の時期に麻疹と診断するのは困難で、発疹期になると判断できるようになります。ただ、麻疹を見たことのない人では判断がつきにくいのが現状です。ワクチン接種歴のある人がかかった場合(修飾麻疹※)、発熱と同時に発疹期に入ったり、koplik斑がないなど、症状が典型的でないことも多いため、さらに見抜くのが難しくなります。
ポイントは”発熱+癒合傾向のある発疹“で、この症状が見られる場合は麻疹の疑いがあります。2週間以内の海外渡航歴があるか、周りに発熱+発疹がある人がいたか、なども参考になるかもしれません。
※修飾麻疹:麻疹に対する免疫を持っているが不十分な人が麻疹ウイルスに感染した場合、軽症で非典型的な麻疹を発症すること
麻疹ウイルスは、患者の咳によりウイルスが飛散し、空気中に漂ったウイルスを周囲の人が吸い込むことで感染が広がっていきます。同じ空間に10分いればうつってしまうほど感染力が強いので、麻疹ワクチンで予防するしかありません。小児期ではMRワクチン(麻疹・風疹ワクチン)として1歳時と5~6歳時に無料券が来るので、忘れずに接種してください。大人でワクチンを2回以上接種していない場合は、早くワクチン接種をしましょう。特に海外に行く前にはワクチン歴を確認してください。
医療関係や保育の職場では、ワクチン歴があっても血液検査で麻疹抗体価(麻疹への抗体の値)を測定することをお勧めします。そして抗体価が陽性であっても、それが低い値に留まっている場合は修飾麻疹の形で発症する可能性がありますので、ワクチンの再接種をしましょう。 実際にかかってしまった場合は、他者に感染を広げないよう、解熱後3日までは隔離が必要です。
解説:藤野 元子
済生会中央病院
小児科医長
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