済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
6月末、富山市での用務を終え、帰京するため、北陸新幹線の上り電車をプラットホームで待っていた。20分ほど時間があったため、ベンチにゆったりと座り、読みかけの本を読むことにした。
憲法学で司法権の限界について論じた固い本だった。裁判でしばしば大きな論点として取り上げられる問題で、半世紀前の学生時代とは判例や学説も大きく変化しているので、興味が尽きない。「部分社会の法理」は、昭和52年の富山大学事件の最高裁判決で用いられ、学会や実務で本格的に議論されるようになったから、学生時代は学んだ記憶がない。
本に没入しているうちに、新幹線が入ってきたことに気がつかなかった。富山駅で乗降者する人が少なかったこともある。ふと頭を挙げるとホームに電車が止まっている。「あっ」と思って車内に滑り込んだ。
集中するあまり、大切なことをうっかり忘れてはいけないが、本来一つのことに集中することは、成果を上げる一番良い方法である。
受験勉強で成功するコツは、限られた時間、集中して勉強することだ。だらだらと長期間、勉強をしても成果を得られない。
本来、人間には集中する能力が備わっているのではないか。例えば人間の耳は、外部の様々な音から自分の必要とする音だけを拾って聞く。しかし、補聴器を利用している人は、すべての音を拾ってしまうので、会話に集中できないとこぼす。
先日の将棋の叡王(えいおう)戦で伊藤匠七段は、藤井聡太叡王を破り、八冠独占の一角を崩した。最終戦の模様を報道番組で見ていたら、解説者が「伊藤七段は、集中すると耳たぶが赤くなる」と述べていたが、そのとおりだった。最終戦は一進一退で、一手のミスが勝敗を決定するという好勝負だった。
対局中の両者の将棋への集中力は、凡人には想像できない。頭脳の中は無数の駒の指し方を検討しているのだろう。膨大なエネルギーを消費して頭脳をフル回転させる。藤井叡王の方も、盤面に極限までに集中していることが伝わってきた。
日々の仕事や生活の難しい問題も集中して考えれば、解決する方法は必ず見つかるものだ。過去の体験や人からの助言などあらゆるものを総動員して考える。
集中すると、これまで頭の奥にしまい込み、完全に忘却していたことが浮かび上がってくるから不思議だ。集中力の魔術なのだろう。
1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。