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2013.07.08
“耳閉感”とは、耳の中が「詰まった感じ」「ふさがった感じ」「膜が張った感じ」「水が入ったような感じ」になることです。登山や飛行機の搭乗、風邪での鼻づまりなどがきっかけで生じることもあれば、何の誘引もなく生じることもあります。耳閉感は、口を大きく開けたり、あくびをしたりするとすぐに治まることが多いのですが、症状が改善しない場合は病気が原因の可能性もあります。
耳の入口付近である外耳では、耳あか、耳掃除のし過ぎによる外耳炎、虫などの異物の混入、外耳道腫瘍などによって、“耳閉感”が起きることがあります。鼓膜の内側である中耳では、中耳炎や耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)などが原因になることがあります。中耳よりもさらに奥にある内耳では、突発性難聴、メニエール病などが原因として考えられます。特に、耳鳴りや難聴を繰り返し、強いめまいを伴うメニエール病が近年よく知られるようになりました。
内耳にある内リンパ液は、毎日新しく作られており、作られるのとほぼ同量を体内に再吸収することによって内容量が一定に維持されています。ところがこのバランスが崩れると内リンパ液が過剰にたまり、内耳がむくむようになります。大部分の患者さんにおける内耳のむくみの原因は分かりません。この原因の分からない内耳のむくみ(内リンパ水腫)をメニエール病と呼びます。
メニエール病の症状としては「めまい」「耳鳴り」「難聴」などがあります。
メニエール病の患者さんは几帳面な性格の人が多いといわれています。また、ストレスに適応しにくい人がかかりやすいともいわれています。
耳の構造とメニエール病が起こるしくみ
1 めまい
2 耳鳴り
3 難聴
典型的なメニエール病では、上記3つの症状が同時に起こります。
突然、グルグルと視界が回って立っていられなくなるようなめまいが、数十分から数時間続き、ときには吐き気や嘔吐(おうと)を伴い、一方の耳の難聴(特に低音部)、耳鳴り、耳がふさがったような感じが起こります。ただし、メニエール病の発作ではこのような症状がすべてそろわない場合もあります。
初期のメニエール病では、難聴や耳鳴りは数日から数週間で落ち着きます。しかし、再発を繰り返して進行すると、症状が治まりにくくなってきます。この病気が長く続くとめまいの発作は少なくなりますが、難聴は変動しながら悪くなります。迅速に治療をして、再発や進行を予防することが大切です。
もし耳がふさがった感じがする、聞こえが悪い、めまい、耳鳴りといった症状があれば、耳鼻咽喉科を受診しましょう。めまいがひどい場合は、脳の病気が潜んでいる場合も多いので、まずは内科を受診することにしましょう。ただし、内科を受診してめまいの原因が分からなかった場合は、耳鼻咽喉科にかかることをお勧めします。その理由は耳閉感、難聴が起こる病気には、メニエール病に加えて突発性難聴、聴神経腫瘍などの重大な病気もあり、これらは内科受診だけでは診断が難しいからです。
いつもより早めに寝るなどして、日々の生活習慣の改善を心がけましょう。仕事や家事を必要以上にがんばり過ぎないようにして、趣味などでストレスを発散するのも効果的です。ジョギングなどの有酸素運動を30分程度週3回行なうと、大きな改善効果があるといわれています。
治療に際しては、発作期には余分な内リンパ液を減らすための薬(浸透圧利尿薬)をまず使用し、抗めまい薬、血流改善薬、ビタミン薬、抗不安薬などを必要に応じて併用します。薬(内服、点滴)を使ってもめまい発作がたびたび起こり、難聴が進行する重症の患者さんには、内リンパ液を減らすための手術を行なうこともあります。
メニエール病の予防のためには、規則正しい生活をするようにし、体質を改善していくことが大切です。特に、睡眠不足とストレスが大きく関わっているので、リフレッシュできる趣味を持つこと、早めに寝ることを心がけましょう。冷え症の人は、身体を温めるようにしましょう。
解説:疋田 紀子
大阪府済生会 富田林病院
耳鼻咽喉科
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