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2013.07.29
結核は、結核菌によって体が侵される疾患です。
結核菌は全身のさまざまな臓器を侵しますが、そのうち約90%以上は肺に病変を起こすため、通常は“結核=肺結核”と考えてよいでしょう。
結核菌はとても強い伝染力を持ち、人から人に感染します。結核患者さんがせきやくしゃみをすると結核菌が空気中に排出され、近くにいる人がその結核菌を吸い込むことで感染します。
ただし、結核菌を吸い込んで感染したとしても、すべての人が発症するわけではありません。約90%の人は抵抗力(免疫反応)を持っており、白血球(マクロファージやリンパ球)によって結核菌を殺したり、結核菌を閉じ込めたりして発症を防ぐことができます。
しかし、こうして発症を予防した後も、結核菌の一部は肺のどこかで眠ったまま生き続けています。この眠ったままの結核菌は、その人が亡くなるまで眠ったままでいることもありますが、高齢になったり、他の病気で免疫力が低下したりすると、目を覚まして暴れ出し、結核を発症させることがあります。
現在、結核患者の多くは、この眠っていた結核菌が目覚めるパターンで発症します(二次結核)。 一方、結核菌を吸い込んで感染したときに免疫力が低下していると、すぐに結核を発症する場合もあります(一次結核)。
結核患者さんには、痰(たん)などに結核菌が検出される人とされない人がいます。結核菌が検出された場合は、他人に感染させないために入院しなければいけません。入院期間は短くて2カ月くらいですが、病状や経過によっては長期入院が必要になることもあります。
治療には、抗結核薬という薬を数カ月にわたり服用します。結核は、薬をきちんと飲み続ければ治る病気です。
戦前の日本における結核は、「若い人がかかって早死にする病気」でした。しかし治療法が確立してからは、患者数は急激に減少しています。ところが、実は欧米などに比べると、日本ではまだまだ結核が蔓延しているのが現状です。
特に近年、日本の高齢者に結核患者が増加していることが問題視されています。これは糖尿病の増加のほか、がんや関節リウマチなどの治療薬の影響によって、免疫力の低下している人が増えていることが背景にあると言われています。
結核は、感染しても潜伏したまま進行するので、初期には無症状であることが多い病気です。また、ある程度進行していくと、呼吸器症状などがみられるようになります。
肺結核からくる特徴的な呼吸器症状には、せきや痰(血痰[けったん]、喀血[かっけつ]を含む)、胸痛、呼吸困難などがあります。特に、「2週間以上続くせき」は結核の重要な指標です。2週間以上せきが続く場合は、結核を疑った上で病院にかかる必要があるかもしれません。
そのほかにも、発熱、発汗(特に寝汗)、体重減少、倦怠感などが生じることがあります。
結核が疑われる場合、以下のような検査を行います。
・ツベルクリン反応
・痰、胸水などの結核菌検査
・胸部レントゲン、胸部CT
・QFT検査(クォンティフェロンTB-2G検査) ※血液検査
痰から結核菌が検出されれば結核と診断されます。また、結核菌がうまく検出できなくても、レントゲンやCTで疑わしい影があり、ツベルクリン反応やQFT検査(クォンティフェロンTB-2G検査)が陽性であれば、結核はほぼ決定的です。
子どもの場合は、生後すぐのBCG接種が有効です。BCGは、結核を予防するための生ワクチンです。平成17年4月1日に改正された結核予防法により、生後6カ月までにBCG接種をすることが定められています。
成人期以降には、このBCG接種の効果はなくなります。そして、成人にBCGを再接種しても予防効果はありません。
そのため、結核の感染を防ぐには患者に近づかないようにするしかありません。しかし、結核は伝染力が強く、空気感染をします。狭くて換気の悪い部屋などで、結核菌を保有している患者と長時間一緒にいた場合、かなりの確率で感染します。
結核だと分かっている人に近づく場合は、「N95微粒子マスク(微粒子用マスク)」を着用して感染を防ぎます。通常のマスクでは目が粗く、結核菌を防げませんが、このマスクは結核菌を防ぐことができます。ただし、N95マスクであっても、顔面に密着させていないと効果がありませんので注意しましょう。
結核の患者を専門病棟に入院させて隔離するのは、こうした厳重な対策が必要なためです。
解説:窪田 剛
大阪府済生会 富田林病院
副院長、内科部長
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