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2013.08.26
関節リウマチは30~50歳代の女性に多く発症する病気です。全国で約70万人の患者さんがいるといわれています。 発症の原因はいまだに解明されておらず、なんらかの原因によって体の中の免疫に異常が起こり、自己成分を異物と勘違いして攻撃をする病気です。
この免疫異常により、複数の関節に関節炎が生じます。手足の指、手首、膝、足首などの複数の関節にまたがって、左右対称に関節の腫れと痛みが起こります。この関節炎の状態が続くと、関節の変形や関節の周りにある骨自体が壊されてしまいます。
関節リウマチの診断は、血液検査だけでは確定ができません。関節リウマチ診療に慣れた医師によって、診察による関節の腫れの状態、症状が起きてからの期間、そして血液検査による炎症反応(CRPなど)および自己抗体(リウマトイド因子、抗CCP抗体)の検査結果などを総合的に判断して、診断がなされるのです。
関節リウマチ治療の基本には、(1)教育、(2)薬物、(3)手術、(4)リハビリテーションの4つがあるといわれています。個々の患者さんが関節リウマチに対する正しい知識を持ち、日常生活の管理をすることで、関節の保護ができ、病状の進行を遅らせることができます。治療薬を用いることで、関節リウマチの炎症を抑えて、関節の変形・破壊を予防します。もしも関節の変形が進行してしまった場合などには、手術をすることで関節の働きを取り戻します。リハビリテーションを行なうことで、筋力をつけたり、日常生活における動作の拡大をしたりすることができます。
最近、関節リウマチの薬物治療法は格段に進歩しています。「メトトレキサート」などの抗リウマチ薬という内服薬が治療の中心とされています。また、「生物学的製剤」という注射の治療薬も登場し、個々の患者さんに応じた治療法の幅が広がってきています。まだ非常に少数の患者さんにしか当てはまりませんが、治療を根気よく続けていくうちに、病状が改善され、治療薬が中止できるようになる人もいます。
関節リウマチという病気は、早い時期に見つけ、早い時期に治療を始めることで関節の変形や骨の破壊を防ぐことができる可能性が高まります。このため早期発見をすることがとても重要です。
以下のような症状が見られたら、関節リウマチ診療に慣れた医師を受診するか、あるいはかかりつけの医師に相談しましょう。
1 朝起きたときに、関節のこわばりが15分以上あり、その状態が1週間以上続く場合
2 手指の関節や手首・足首の関節が腫れ、その状態が1週間以上続く場合
3 複数の関節が腫れ、その状態が1週間以上続く場合
関節リウマチでは、免疫異常によって、関節周囲にある滑膜に炎症が起きる
関節リウマチは免疫の異常によって起こる病気ですが、医学解説の項でも述べたとおり、現在でもその原因が明らかになっていないため、残念ながら発症を防ぐ方法というものは確立されていません。
しかし、これまでのさまざまな研究成果から、発症には喫煙習慣が関係しているという報告や、歯周病菌に対する免疫応答が関連しているといった報告が最近話題となっています。禁煙や定期的な歯磨きなどによる口腔(こうくう)ケアが、関節リウマチの発症予防対策となるかもしれません。
関節リウマチかどうかはっきりとは分からない状態で関節の痛みが持続している場合は、早めに受診するようにしましょう。もしも関節リウマチであれば、早い時期に見つけて治療を始めることで、関節の変形や骨の破壊を防ぐことができる可能性が高まります。現在の関節リウマチ治療の目標は、関節の変形や破壊を予防して、健康な人と同様な生活が送れるようになることです。
関節リウマチと確定診断がなされた患者さんの場合、風邪を引いたり、睡眠不足が続いたりといった体のストレスが強い状況では、関節痛などの症状が悪化することがあります。病状悪化を予防するためには、手洗い・うがいなどの基本的な感染予防対策や生活リズムを整えるといった行動が大切といえるでしょう。
解説:渡邉 秀之
福岡県済生会飯塚嘉穂病院
リウマチ内科部長
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