社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

しこり しこり

しこりとは、皮膚や皮下組織にできる腫瘤(しゅりゅう)です。体の至るところにできますが、硬さ、大きさ、痛みの有無は、原因によって異なります。徐々に大きくなる場合もあります。

しこりには、良性のものと悪性のものがあります。
良性のしこりの代表的なものには、脂肪腫、粉瘤、リンパ管腫、イボ、脂漏性角化症があります。原因は、脂肪組織が増殖する、体から剥がれ落ちなかった角質や皮脂がたまる、細菌やウイルスへ感染する、外傷や手術により皮膚の一部が中に入り込む、発生異常、皮膚の老化などです。良性であっても、徐々に大きくなり神経などを圧迫するようになれば、治療が必要です。悪性のしこりの代表的なものには、乳がん、肉腫、リンパ腫、甲状腺がん、さらにはほかの悪性腫瘍(がん)の転移によるものなどがあり、それぞれに適した治療が必要になります。

しこりの原因や状態はさまざまですが、放置すると悪化するものもあり、早期に治療が必要な病気が潜んでいることもあります。自己判断はせず、医療機関を受診するようにしましょう。

どんな人に、どんなときに現れるか

男女問わず幅広い年齢層にみられます。疑われる病気によって、しこりの現れる部位や大きさ、状態などに特徴があります。

どんな病気が関係しているか

「しこり」の症状が現れる主な病気の中で、発症頻度の高いもの、特徴的なもの、注意が必要なものをとりあげました。病気についてさらに知りたい場合はリンク先をご参照ください。

症状とその特徴

説明

疑われる主な病気

・首、体幹、前腕にできるやわらかいしこり

・痛みやかゆみはない

女性に多い。しこりは1個だけのこともあれば複数個できることもある。大きくなると周辺にしびれや違和感を生じることがある

脂肪腫

・顔、首、背中、耳のうしろのしこり

・皮膚の一部が陥凹して袋状になっている

内容物は粥状の皮膚の垢で、悪臭がある。大きくなると破裂して化膿することがあり、痛みが生じる

粉瘤

・頭頚部、体幹、四肢の体表にできるやわらかいしこり

・しこりの境界はあいまい

・痛みはない

小児に発生する。多くは先天性で、胎生期のリンパ管の発生異常によって生じると考えられている

リンパ管腫

・顔や手足、首、足裏、外陰部などさまざまな部位にできるしこり

・赤く、かゆい場合もある

子どもから高齢者まで幅広い世代でみられる。原因はウイルス感染であることが多いが、加齢や紫外線によるものもある

イボ

・顔や手の甲、腕にできることが多い

かゆみを伴うことがある

・表面がザラザラして褐色や黒色に盛り上がる

中年期以降に増える。日焼けしやすい生活を送ってきた人がなりやすく、しみが徐々に隆起して生じることが多い

脂漏性角化症

・乳房のしこり

・乳房のひきつれ

・乳頭や乳輪に湿疹やただれ

・乳頭の先から血の混じった分泌液が出る

・乳房周辺のリンパ節の腫れ

30歳代から増え始め、40歳代後半~50歳代前半に最も多く、以降は減少する。ほぼ女性だが、まれに男性もなることがある。男性の場合、乳がんの認識がないため発見が遅れる場合が多い

乳がん

・脂肪や骨、筋肉などにできるしこり

腫れや痛み(骨肉腫)

・痛みのないしこりや腫れ(軟部肉腫;脂肪や筋肉などに発生)

希少がんで、罹患率は低い。骨肉腫は10歳代の男性に多く、進行すると骨折を起こしやすい。脂肪肉腫は中高年に多い

肉腫(骨肉腫、脂肪肉腫)

・首や脇の下、足の付け根などリンパ節の多い部分のしこり

・痛みはない

しこりはゴムのような硬さ。症状が進行すると、発熱、倦怠感、寝汗、体重減少などがみられる

リンパ腫

・のどぼとけのすぐ下あたりのしこり

・声のかすれ、飲み込みにくさ、誤嚥、違和感や圧迫感が出ることも

10歳代~高齢者までと幅広く、女性に多い。しこりはやわらかいこともあれば、硬いこともある。約90%はゆっくりと進行するが、進行の速い未分化がんも存在する

甲状腺がん

チェックポイント

(1)次のような症状の有無を確認する

  • しこりはどこにあるか
  • しこりはどのような性状か
  • 痛みはあるか
  • しこりが表面の皮膚と一緒に動くか
  • そのほか、気になる症状があるか(あればどのような症状か)
  • しこりに変化(大きさ、数など)があるか

(2)次のような環境を確認する

  • 発症年齢
  • 家族に同じ経過の人がいるか
  • 体重の増加
  • 若年(未成年)での放射線被ばくの有無


泉 学

解説:泉 学
済生会宇都宮病院
内科系診療部長補佐・総合診療科 主任診療科長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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