社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2020.11.25

霰粒腫 (さんりゅうしゅ)

chalazion

解説:瀬口 次郎 (岡山済生会総合病院、岡山済生会外来センター病院 岡山済生会外来センター病院 特任副院長)

霰粒腫はこんな病気

眼の表面は涙で覆われていますが、涙の大部分を占める水分が蒸発しないように表面には油の層があります。この油分を分泌するのが、瞼板(けんばん=まぶたの中の線維性組織)内を縦に走行する分泌腺であるマイボーム腺です。このマイボーム腺の出口が劣化した油分などによって詰まり、分泌物の脂が瞼板の内部にたまって腫瘤(しゅりゅう)となるのが霰粒腫です。子どもも大人も発症します。

霰粒腫の症状

基本的に痛みや赤みはありません。まぶたに触れると、皮膚の下にコリコリした「しこり」を感じることができます。しこりが小さいときには外見では分かりませんが、大きくなると部分的なまぶたの隆起として観察されます。しこりが大きくなり、貯留物が瞼板の前方の皮下に破れるとまぶたの皮膚が赤くなり、皮膚に瘻孔(ろうこう=管状の穴)を形成することがあります。まぶたの裏(眼瞼結膜)側に破れるとポリープを形成することがあります。

霰粒腫の検査・診断

視診、触診で容易に診断できます。上まぶたをひっくり返すと、まぶたの裏側にポリープがみられることがあります。

霰粒腫の治療法

3分の1は自然寛解するとされており、まぶたを温めたり(温罨法=おんあんぽう)、まぶたの縁を専用のシャンプーで洗浄して清潔に保ち経過を観察します。軽快しない場合には以下の治療を行ないます。高齢者にみられる再発性霰粒腫は悪性腫瘍(脂腺がん)との鑑別が必要で、注意を要します。

薬物療法
①副腎皮質ステロイド含有軟膏の外用:皮膚が発赤した場合に塗布し様子をみます。
②副腎皮質ステロイド局所注射:霰粒腫の中に薬剤を注入します。有効性は約80%とされています。
③抗生物質の内服:酒さ性ざ瘡(しゅさせいざそう=ニキビのような吹き出物)などの皮膚の病気に合併して再発を繰り返す場合に、有効なことがあります。

手術療法
皮膚または眼瞼結膜を切開して内容物をかき出します。局所麻酔下で行なうことが一般的ですが、小児で副腎皮質ステロイド局所注射が困難なときは、全身麻酔下での手術が必要な場合もあります。

まばたきの際に違和感を感じ、まぶたを触ってしこりに気が付いたり、周囲から腫瘤を指摘されたりして受診する場合があります。

マイボーム腺関連疾患はマイボーム腺に関連するまぶたのさまざまな異常で、食生活など生活習慣とも関係し、メタボリックシンドロームとも関連があるとされています。霰粒腫はマイボーム腺関連疾患である眼瞼炎(がんけんえん)に合併する割合が高く、眼瞼炎がみられれば早めに治療し、常日頃から健康な生活を送るとともにまぶたを清浄に保つことが予防につながると考えられます。


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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