2014.12.17 公開
2025.06.30 更新
悪性リンパ腫
Malignant lymphoma
監修:山村 亮介 (中津病院 血液内科 部長)
悪性リンパ腫はこんな病気
人の身体には、病原体から自らを守る免疫システムが備わっています。免疫細胞の主役は白血球で、マクロファージ、リンパ球、顆粒(かりゅう)球などがその仲間です。リンパ球は、体内に侵入してきた病原体を排除する重要な役割を担っています。そのリンパ球ががんになって異常に増える病気が悪性リンパ腫です。
悪性リンパ腫は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2種類に大きく分けられます。日本人の場合はホジキンリンパ腫は少なく、ほとんどが非ホジキンリンパ腫です。非ホジキンリンパ腫は、さらにB細胞リンパ腫とT/NK細胞リンパ腫に分類されます。
悪性リンパ腫の治療法
悪性リンパ腫の病期は、第I期~IV期の4段階に分けられます。I期・II期はリンパ腫が横隔膜を境とした身体の片側にとどまっている状態で、III期・IV期はリンパ腫が横隔膜の両側にある状態です。悪性リンパ腫と診断されたら、CTやPET/CT、骨髄検査などを行なって全身への広がりを調べ、治療方針を決定します。治療は、抗がん剤による化学療法、放射線療法が主体ですが、免疫を利用した治療や、経過によっては造血幹細胞移植も行なわれます。他のがんと比べて化学療法がよく効きますが、患者さんの2人に1人以上が再発すると言われています。
悪性リンパ腫は血液のがんでは最も患者数が多く、非ホジキンリンパ腫は人口10万人に対して10人強です。特に中高年に多く、高齢化の影響で患者が増加傾向にあります。
早期発見のポイント
悪性リンパ腫の最も一般的な症状は、リンパ節の腫れです。首の周りやわきの下、足の付け根にあるリンパ節にしこりがよく見られます。そのほか、鎖骨、あごの下、腹部、膝の裏などのリンパ節が腫れることもあります。風邪を引いたときなどにもリンパ節は腫れますが、その際は手で触ると痛みがあります。しかし、悪性リンパ腫のしこりは、押しても痛くないのが特徴です。やわらかくて丸みのある、グリグリとした塊で、徐々に大きくなっていきます。こんな症状に気づいたら、医療機関へ受診することをお勧めします。また、胸部や腹部などにあるリンパ節のように、身体の表面からは触れることができない場所で悪性リンパ腫が発症した場合は、健康診断などで偶然発見されることがあります。ほかに、発熱、倦怠感、体重減少などの症状が現れるケースも見られます。
予防の基礎知識
悪性リンパ腫の原因は徐々に研究が進んでいますが、予防方法は今のところありません。しかし、免疫不全状態・化学物質への曝露・ウイルス感染(EBV、HTLV-I、HIV、C型肝炎ウイルスなど)・細菌感染(ピロリ菌)などがリスクを高めることが知られています。実際に日常生活で予防することは難しいため、健康診断を定期的にうけることや、異常を感じた際に医療機関で検査をうけていただくことが大切です。
監修:山村 亮介
中津病院
血液内科 部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。
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