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2022.06.22
自己免疫性溶血性貧血は貧血の一種で、赤血球が破壊されること(溶血)で起こります。
血液成分中の赤血球は、酸素、二酸化炭素を運搬する細胞です。自身の細胞に対する抗体は「自己抗体」と呼ばれますが、赤血球に対する自己抗体ができることにより、赤血球が血管内や脾臓(ひぞう)で破壊されて貧血となります。
自己抗体が作られる機序の詳細が不明であることから、発症の予測や予防は困難です。
原因となる病気がない「特発性」と、悪性リンパ腫や膠原病といった病気に伴って発症する「続発性」があります。
貧血、黄疸(おうだん)、脾腫(ひしゅ=脾臓が腫れて大きくなること)が主な症状です。
貧血症状として、動悸、息切れ、疲労感があります。黄疸の症状として、眼球結膜や皮膚が黄色く染まったり、皮膚にかゆみを感じたりします。
これらの症状以外にも、尿が褐色になったり、胆石症を合併したりすることもあります。
血液検査で、ヘモグロビン(赤血球に含まれるタンパク質)の低下、ビリルビン(ヘモグロビンが分解されるときにできる黄色い色素)の上昇がみられ、赤血球に対する自己抗体が検出されます。
また、貧血や黄疸の原因となる他の病気がないか、骨髄検査(腰の骨に針を刺して骨の中の骨髄組織をとる検査)でチェックすることがあります。
副腎皮質ステロイドホルモン薬を投与するステロイド治療が有効です。
特発性では、中長期的な治療継続が必要となります。続発性の場合は、原因となった病気によって経過や治療効果が異なります。
なお、ステロイド治療が実施できない場合などには、免疫抑制薬による治療、B細胞(免疫細胞の一種)の自己抗体産生を抑制する治療、または脾臓摘出術を行なうことがあります。貧血が重度であれば、輸血をする場合もあります。
貧血の症状によって病気に気づくことがあります。ただ、症状の強さは個々の患者さんの状態(心臓、肺の病状など)によって異なります。
貧血の進行が早ければ、症状はより強くなります。一方、貧血がゆっくりと進行した場合には、心臓が血液量の増加などを行なって体内のバランスを調節する代償機転(だいしょうきてん)という働きにより、症状が出にくく発見が遅れることがあります。
赤血球に対する自己抗体が作られる原因が分かっていないため、残念ながら現時点では予防法はありません。貧血の症状がみられたら、かかりつけ医を受診することをお勧めします。
解説:村木 和彦
山口総合病院
内科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。