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2022.01.05
正常では円盤状の赤血球が、赤血球の膜(赤血球膜)を構成しているタンパク質の遺伝子異常のため、小さな球状となることで変形能(形が変わっても本来の姿に戻る力)が低下し、壊れやすく(溶血)なってしまう病気です。
先天性溶血性貧血の一種で、日本ではその約70%を遺伝性球状赤血球症が占め、5~10万人に1人の頻度と推測されています。病名の通り、多くが遺伝によるものですが、約25%は突然変異による孤発例です。
年齢などにより、出やすい症状は変化していく傾向にありますが、主要なものは赤血球が脾臓で破壊されることによる貧血と黄疸、脾臓の腫大(脾腫)、胆石などです。
新生児期(生後28日未満)には黄疸、貧血が主症状としてみられ、ほとんどの患児が光線療法(特殊な光を当てる治療)を必要とし、赤血球輸血、交換輸血が必要な場合もあります。乳児期以降に脾腫がみられるようになり、成人期までにはほぼすべての症例で発生します。学童期以降は、骨髄で赤血球がつくられる働きが亢進することに代償され、貧血にならないこともあります。
また、分解された赤血球から生じる色素であるビリルビンが過剰になるため、ビリルビンを主成分とする胆石ができやすくなります。伝染性紅斑(リンゴ病)の原因になるヒトパルボウイルスB19に感染すると、急激に著しい貧血(無形成発作)を生じることがあり、赤血球輸血が必要になります。このほか、風邪をひいたとき(ほとんどはウイルス感染症)などに、脾臓の機能が亢進して溶血が盛んになること(溶血発作)で、症状の悪化がみられる場合があります。
貧血や黄疸などの症状があり、各種検査により溶血性貧血と診断された上で、顕微鏡により血液細胞を観察した際に小型球状赤血球がみられた場合、遺伝性球状赤血球症が疑われます。診断を確定するには、赤血球の脆弱性を調べる「赤血球浸透圧抵抗試験」、フローサイトメーター(分析装置)を用いて赤血球膜とEMA(蛍光色素)の結合度を測る「EMA結合試験」など、さらに必要な検査が行なわれます。
貧血の程度や、胆石症の有無などから重症度を判断して治療法を決定します。軽症の場合は様子をみる(経過観察)にとどめますが、重症の場合は脾臓を摘出(脾摘)して、赤血球が破壊されるスピードを緩和します。
ただし、脾臓は免疫に関わる臓器の一部であり、特に乳幼児期は脾摘後に肺炎球菌などによる重症感染症にかかりやすくなるため、重症例(血中ヘモグロビン値6~8g/dL)でも6歳になるまでは脾摘を行なうのを待つ方がよいとされています。
新生児期に重症の早発黄疸(生後すぐに現れる黄疸)がみられたことで見つかることがあります。また、血縁者に同じ病気の人がいる場合は遺伝する可能性があるので、家族歴を確認することが大切です。大人になってから健康診断で見つかることもあるので、貧血と診断されたときは、医療機関で原因となる病気まで調べてもらうことが重要です。
先天性のため、現時点では予防法はありません。中等症、重症例と妊娠中は骨髄での赤血球造血が盛んなため、葉酸欠乏が生じないように緑黄色野菜を多くとるなど食事に気をつけてください。また、現れやすい合併症の一つに胆石症があることから、定期的に腹部の超音波検査を受けて確認することも大切です。
解説:片岡 哲
三条病院
小児科
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