胸痛
この症状が現れる主な病気 36件
胸痛はその原因によって、大きく「胸の表面で起こる痛み」「胸の深いところ(内臓)で起こる痛み」「胸ではないところに原因がある痛み」の三つに分けられます。
胸の表面、すなわち胸壁(肺より外側にある、肋骨や横隔膜を含む組織)に原因がある場合は、どこが痛むのか指で示すことができるのが特徴です。刺すような痛みや、チクチクする痛みが多く、せきや呼吸により痛みが出ることもあります。胸壁の神経や筋肉の炎症、けが、皮膚の病気(帯状疱疹など)、風邪などです。
胸の深いところ(内臓)で起こる痛みは、重大な心臓や血管の病気(心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓症など)である可能性があります。下記のような症状がある場合は早めに医療機関(循環器科、内科)を受診してください。救急車を呼んでもかまいません。
心臓や血管以外にも、食道や胃・十二指腸といった消化器の病気、肺炎や気胸など呼吸器の病気、骨や筋肉の問題(整形外科の病気)などがあり得ます。また、こころの病気(パニック障害や過換気症候群など)によるものもあります。
どんな人に、どんなときに現れるか
胸痛で気を付けたいのは、中年~高齢者です。強い胸痛を訴えて見た目にも重症感がある場合は、躊躇せずに救急車を呼ぶようにしてください。呼吸困難や意識低下がみられる場合も緊急事態です。
胸痛のすべてが生命に関わるわけではありませんが、発熱やせき、皮膚の変化(赤みや水疱)、胸やけなどの症状がある場合は注意が必要です。呼吸によって胸痛が変化する場合は呼吸器の病気、食後や寝ているときに胸痛が出る場合は消化器の病気(胃食道逆流症など)の関与が考えられますが、例外も多く一概にはいえません。1週間以上続くようであれば医療機関を受診してください。
どんな病気が関係しているか
「胸痛」の症状が現れる主な病気の中で、発症頻度の高いもの、特徴的なもの、注意が必要なものをとりあげました。病気についてさらに知りたい場合はリンク先をご参照ください。
症状とその特徴 |
説明 |
疑われる主な病気 |
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・電気が走るようなチクチクした痛み(身体の左右どちらかに起こる) |
肋骨に沿って走っている神経が痛む。身体を動かしたときに痛みを強く感じることがある |
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・強い胸の痛み(15分以上続く) |
心臓に血液を運ぶ冠動脈が詰まり、栄養が足りなくなって心筋が壊死してしまう |
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・急に起こる激しく鋭い胸痛(裂けるような感覚) |
大動脈の壁の3層構造の一部が剥がれ、そこに血液が流れ込んで血管壁が裂けていく |
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・鋭い胸痛(息を吸うとき) ・息苦しさ |
肺の動脈に血栓が詰まる。血栓の多くは足の血管でできたもの |
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・胸痛(ピリピリ感、肋間神経痛) ・皮膚に赤みや小さな水疱が帯状にたくさんできる |
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・胸痛、胸やけ(食後、横になったときに悪化する) |
胃酸がのどに逆流することで粘膜に炎症を起こし、痛みが起こる |
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《パニック発作》 ・突然の強い不安 |
特定の状況でパニック発作が起こる。発作の一部として胸痛が出ることもある |
チェックポイント
(1)次のような症状の有無を確認する
- どのような痛みがあるか(絞扼感、圧迫感、灼熱感、ピリピリ感など)
- どの程度の痛みか
- 痛みはどれくらい続いたか
- 痛みが起こった/起こるときの状況
- 姿勢の変化や呼吸、軽い作業などで痛みが変化するか
- 痛み以外の症状はあるか(呼吸困難、意識低下、吐き気、冷や汗、発熱、水疱など)
(2)次のような環境を確認する
- 現在、患っている病気はあるか(生活習慣病など)
- 健康診断で指摘されていることはあるか
- 飲んでいる薬やサプリメントの種類
- 喫煙をしているか
- 生活の変化(ライフイベント)や精神的ストレスなどがあったか
解説:泉 学
済生会宇都宮病院
内科系診療部長補佐・総合診療科 主任診療科長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。