済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
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2017.08.30
胃と食道のつなぎ目に当たる部分は、開いたり閉じたりする弁の役割をしており、下部食道括約筋(Lower Esophageal Sphincter:略称はLES)と呼ばれます。LESが正常に機能することで、食物を飲み込むと食道から胃にものが自然に運ばれます。食道アカラシアでは、常にLESが収縮した(閉まった)状態にあり、物を飲み込んでもLESが緩まないため、食べた物がいつまでも食道にたまってしまう疾患です。このため患者さんは物を飲み込みにくい、つかえた感じがする、吐いてしまうなどといった症状が現れます。
夜遅くに食事をした後就寝すると、口や鼻に食べた物や唾液が逆流し、枕もとが汚れてしまうといった症状がみられることもあります。また、知らないあいだに慢性的な食物や唾液の逆流をきたすことから、喘息のようなせきの症状がみられることもあります。食道の運動機能も障害されているため、食道が異常収縮を起こすことで強い胸の痛みを訴えることもあり、時には心筋梗塞と間違えるほど強い痛みを伴う場合もあります。
発生頻度は人口10万人あたりに1人程度とまれで、性差はなく、20~50代と比較的若年での発症が多いとされています。現時点では原因はよくわかっていませんが、食道やLESの神経細胞の変性・減少や、ウイルス感染などがその一因ではないかと考えられています。
物を飲み込みにくい、つかえた感じがする、吐いてしまうなどといった症状が慢性的にみられる場合、特に20~50代と比較的若年でそのような症状が続く場合は、食道アカラシアを疑う必要があります。また、せきや胸痛などの症状を伴うこともあります。
この病気の可能性を念頭に置いて、内視鏡検査(胃カメラ検査)やバリウムを飲む食道X線造影検査などを行なうことで、ほとんどの場合診断が可能です。内視鏡検査では、食道内腔の拡張や食物の貯留など、食道X線造影検査では、食道下部の鳥のくちばし状のなめらかな狭窄、食道の拡張・蛇行、造影剤の停滞などが特徴的な所見とされます。さらに、より詳しい検査として食道内圧測定(食道内の圧力を調べることによって食道の運動機能を検査)が行なわれることもあります。
残念ながら現時点では原因は不明で、確かな予防法はありません。ただし有効な治療法は確立されており、新しい治療法も開発されてきていますので、適切な治療を受けることで、生活の質を保つことが可能となっています。
主な治療法
④は近年、より身体に負担をかけない手術として導入され、施行例が増加しています。軽症の場合は①②を、重症例で③④が考慮されることになります。
解説:羽生 泰樹
大阪府済生会野江病院
消化器内科部長
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