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2014.12.24
胃と食道のつなぎ目に当たる部分は、胃液が食道に逆流するのを防ぐために、開いたり閉じたりする弁の役割をしています。この「弁」がうまく働かなくなると、胃酸を含んだ胃液が逆流し、食道の粘膜が酸の攻撃にさらされることになります。胃食道逆流症は、胃の内容物の食道への逆流が過剰に起こることで、不快な症状を生じたり、食道粘膜に炎症が生じて、ただれた状態になったりする病気です。内視鏡検査で食道粘膜に炎症が見られる場合を「逆流性食道炎」または「びらん性胃食道逆流症」と呼び、食道粘膜に傷が見られない場合を「非びらん性胃食道逆流症」と呼んで区別することがあります。
衛生環境の改善でピロリ菌に感染している人が減り、食生活など生活習慣が欧米化して日本人の胃酸の出る量が増加していることや、高齢者は胃と食道のつなぎ目に当たる「弁」の働きが低下する場合があることから、日本でも最近患者さんが増えており、今後もさらに増加していくと考えられています。
代表的な症状は、胸焼け(胃や胸の下あたりから上がってくる熱い感じ)や呑酸(酸っぱい液体が口の中に戻ってくる感じ)です。これらの症状は大変煩わしく、生活の質を低下させる原因となります。また食道の炎症(ただれた状態)が長期間続くと、食道がひきつれて食べ物の通りが悪くなる「食道狭窄」や、「バレット食道」という状態になることがあります。バレット食道とは、食道の傷ついた細胞が修復される際に、本来の食道の細胞である扁平上皮ではなく、胃や腸に似た円柱上皮という細胞で覆われることです。バレット食道からは、食道がんの一種である食道腺がんが発生しやすいといわれています。欧米では、1980年頃から「食道腺がん」が急増しており、今後、胃食道逆流症の増加とともに、日本でもそのようなことが起きないか心配されています。
胃液が食道に逆流することによって起こる代表的な症状が、胸焼け(胃や胸の下あたりから上がってくる熱い感じ)と呑酸(酸っぱい液体が口の中に戻ってくる感じ)です。これらは、胃食道逆流症の定型症状とも呼ばれます。特に、以下のような場合に症状が見られるようであれば、胃食道逆流症が強く疑われるので、医師に相談してください。
・食後
・いつもより食べ過ぎたり、脂肪分や香辛料の多い食事をしたとき
・横になったり、前かがみの姿勢になったとき
そのほかにも、食道に由来する症状である「胸のつかえる感じ」や「胸痛」が生じることや、食道由来とは考えにくいような「喉の違和感」「声のしわがれ」「喘息症状」などが起きることが知られています。
症状が続く場合には、経過中に一度は内視鏡検査を受けることをお勧めします。同じような症状が、胃がんや食道がんなどの悪性の病気で起きる場合もあるので、がんではないことを確認する必要があります。また、内視鏡検査によって、食道の炎症の有無や程度が分かるので、その後の治療を考えるうえで大いに参考になります。
この病気は、胃と食道の間の逆流を防止する弁の働きが十分でないために起こると考えられています。そのため、異常な逆流そのものを治すことができれば最もよいのですが、そのような働きを持つ有効な薬剤はまだ開発されていません。しかし、胃酸の分泌を強力に抑える働きを持つ「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」という薬により、速やかに症状が消失し、食道の炎症が改善されることが分かっています。薬を中断すると症状や食道の炎症が再発してしまう場合には、長期にわたって薬を続けることもありますが、薬の安全性は高いので、安全性の面で大きな心配はありません。
治療の際は、薬を飲む量や回数をしっかり守りましょう。また、症状がなくなっても病気が完全に治ったわけではありません。自己判断で薬を中止すると、悪化したり、再発する場合も多いので、服薬は医師とよく相談しましょう。また、別の病気の治療で他の薬を使用しなければならないときは、主治医の先生に知らせるようにしましょう。
再発を繰り返さないために、以下のようなことに注意しましょう。
・暴飲暴食はやめて、腹八分目を心がける
・脂肪の多い食事やアルコール、香辛料などは控えめにする
・ベル卜、帯、ガードルなど、お腹を締めつけるものはやめる
・前かがみの作業は逆流を起こしやすいので、できるだけ避ける
・タバコはやめる
再発を繰り返すと、まれですが重症になって手術が必要になることがあります。そうならないためにも、 医師の指示通り薬をきちんと服用し、食事の内容に注意し、生活習慣をよくするように心がけましょう。
解説:羽生 泰樹
大阪府済生会野江病院
消化器内科部長
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