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2023.12.20
咽喉頭異常感症は、のどに何か詰まっているような感覚があるのに、明確な原因がなかなか見つからない状態のことをいいます。
のどは、口の中より奥、食道につながる「咽頭(いんとう)」と、気管から肺へつながる「喉頭(こうとう)」に分類され、咽頭はさらに鼻の奥の「上咽頭(じょういんとう)」、口の奥の「中咽頭(ちゅういんとう)」、食道との境目の「下咽頭(かいんとう)」に分けられます。咽喉頭異常感症では、のどのどこかに違和感があったり何か詰まっていたりするような感じがするのに、検査を受けても何も詰まっておらず、病気も見つからないのが特徴です。
違和感の原因はストレスや疲労で自律神経失調が起こり、のどの筋肉が過剰に緊張することによるものと考えられており、発症は50代前後の女性に多いといわれています。
昔は「咽喉頭神経症」「ヒステリー球」とも呼ばれていました。中国医学では、梅の種が詰まった感じを表す「梅核気(ばいかくき)」と呼びます。
「のどに違和感がある」「のどに何か詰まっている感じがする」など、のどにおける違和感や圧迫感が主な症状です。通常は問題がなくても、飲食時などに症状が現れることもあります。
のどに違和感を起こす病気で最も多いのは「逆流性食道炎」です。胃から逆流してきた胃酸による粘膜障害が原因で、咽喉頭逆流症とも呼ばれます。ほかには、鼻閉(びへい=鼻詰まり)による口の乾き、副鼻腔炎による後鼻漏(こうびろう=のどに落ちた鼻水)の引っかかり、扁桃の腫れ、アレルギーによるかゆみなどが原因として多くみられます。
下咽頭や喉頭は口から見えないため、鼻から細い内視鏡(ファイバースコープ)を入れて観察します。内視鏡の先で粘膜を触って、飲み込みや咳などの反射がうまく起こるかを試すこともあります。腫瘍や麻痺が見つかることもあるため、慎重に観察します。
甲状突起(こうじょうとっき=喉仏)の下で、気管の前にある、ホルモンを出す「甲状腺」が原因のこともあります。その際の診断には超音波検査やCT検査などが役立ちます。
その他、咽喉頭異常感症の可能性として考えられる病気や原因は以下の通りです。
・骨の異常
・心臓病
・脳神経疾患
・糖尿病
・自己免疫疾患
・貧血
・心身症
・精神疾患
・薬の副作用
これらの可能性を考えてさまざまな検査を行なっても病気が見つからない場合に「咽喉頭異常感症」と診断されます。その後、期間を空けて再度診察を受けますが、これは時間の経過で本当の原因となる病気が見つかることがあるためです。
逆流性食道炎や副鼻腔炎、アレルギーなど、違和感の原因となっている病気が分かれば、その病気を治す治療を行ないます。
また、病気の不安もストレスの一つなので、診察を受けて病気ではないと分かり、一安心することが症状の改善につながります。
「悪い病気ではないか?」「がんではないか?」などと心配することが症状の持続に影響している場合は、気持ちを安定させる薬を服用することが有効です。漢方薬も効果があります。
鼻やのどの乾燥は、違和感を悪化させます。適度に水を飲むことを心がけるとともに、空気が乾燥しているときは加湿器やマスクの着用をお勧めします。喫煙や過量の飲酒もやめましょう。
病院を受診する際は「のどの違和感」を別の言葉で言い換えてみてください。以下はその一例です。
・何かが詰まっている感じ
・飲んだ薬がのどに残っている
・腫れた感じ
・呼吸がしづらい
・水が飲みにくい
・食べ物が飲み込みにくい
・イガイガする
・チクチク痛い
・しみる、むせる
・首が締め付けられる感じ
また、以下の事柄を具体的に伝えると、診断や治療の参考になります。
・違和感が起こり始めた時期(何日前、何カ月前、何年前など)
・違和感が出るタイミング(朝、食事中、食後、仕事中、寝ているときなど)
・違和感のある位置(指で示すと通じやすい)
・きっかけになった事柄(いつもと違うものを食べた、風邪をひいていた、疲れていた、だるいなど)
ストレスや疲労が原因となると考えられているので、ストレスをため込まず、解消していくことが大切です。
また、鼻やのどの乾燥が違和感を引き起こすこともあるので、小まめな水分摂取を心がけ、マスクや加湿器を上手に活用しましょう。禁煙し、飲酒も控えめにしてください。
解説:金子 富美恵
済生会有田病院
耳鼻咽喉科 医長
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