社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2013.06.17

糖尿病

diabetes

解説:山口 宏 (山形済生病院 内科診療副部長)

糖尿病はこんな病気

糖尿病は「インスリン」というホルモンが足りなくなったり、うまく働かなくなったりした結果、血液中のブドウ糖(血糖値)が高くなる病気です。代表的な2つのタイプを紹介します。
「1型糖尿病」はインスリンを作る「すい臓のβ細胞」が壊れた結果、インスリンがほとんどなくなる糖尿病で、インスリン治療が欠かせません。
「2型糖尿病」はインスリンが少なくなることと肝臓や筋肉でインスリンの働きが悪くなることが関係しています。遺伝や生活習慣(食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスなど)の影響を受け、日本人の糖尿病の95%以上がこのタイプです。
早期の糖尿病は自覚症状に乏しく、自分で気が付くことが少ない病気です。しかし血糖値がかなり高くなると、異常に口が渇く、異様に水分を摂る、尿量が多い、食べているのに体重が減る疲れやすい、目がかすむなどの症状が出てきます。
また症状がないからといって糖尿病を放っておくと全身に合併症が起こってしまいます。

糖尿病の合併症

1 神経障害:末梢神経が障害されると、足のしびれや痛み、異常感覚、こむら返りなどの症状がみられます。さらに進むと感覚が鈍くなり、壊疽(えそ)の危険が高くなります。
2 網膜症:目の奥にある網膜に出血などが起きて、視力低下・失明の原因になります。定期的な眼科受診・眼底検査が必要です。
3 腎症:腎臓の機能が低下するとタンパク尿が見られ、さらに進むと腎不全となり、だるい、疲れる、足がむくむなどの症状が出ます。腎不全になると透析治療が必要になります。
4 動脈硬化症:糖尿病がなくても起きる病気ですが、糖尿病があると3~4倍危険性が高くなります。心筋梗塞脳梗塞閉塞性動脈硬化症など、命や生活に関わる重大な病気です。
5 その他:感染症にかかりやすい、虫歯・歯周病、水虫になりやすい、傷が治りにくいなど全身に影響を及ぼします。

早期発見のポイント

前項でも説明しましたが、早期の糖尿病は自覚症状がほとんどありません。早く見つけるためには症状はあてにならないので、血糖値を測ってみることが大切です。健康診断でも血糖値を測りますが、異常値が見つかったらそのまま放っておかないで、医療機関を受診することが重要です。決して放置しないでください。
糖尿病が疑わしい場合はブドウ糖負荷試験を行います。これはブドウ糖入りの甘いサイダーを飲んで3~5回採血する検査です。

糖尿病の検査・診断

以下に日本の基準を示します。

1 随時血糖値が200mg/dL以上
2 空腹時血糖値が126mg/dL以上(正常は110mg/dL未満)
3 ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dL以上(正常は140mg/dL未満)
4 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)(※)が6.5%以上

※HbA1cは過去1~2カ月間の血糖値の平均を表す指標で、糖尿病の診断だけではなくコントロール状況を見る際にも使われています。
2013年4月からは健康診断・特定健診でもNGSP値(国際標準値)が使われています。以前に用いられていたJDS値よりも約0.4高い数値になっていますので、過去のデータと比べるときには注意が必要です。

血糖値が正常と糖尿病の間にある場合は「境界型(糖尿病予備軍)」と判定されます。「境界型」であっても、正常な人に比べると動脈硬化の危険性は高くなりますので、生活習慣の改善を中心とした取り組みが望まれます。

糖尿病を予防するためには

糖尿病を予防する上で大事なことは肥満にならないことです。そして肥満を防ぐことは糖尿病だけではなく高血圧脂質異常症など多くの生活習慣病の予防にも役立ちます。そのためにはバランスのとれた食事と運動が大切です。そのポイントは次の通りです。

・野菜を多く摂る(1日350g以上)、特に緑黄色野菜は1日120g以上
・甘いものや脂っぽいものは食べ過ぎない
・決まった時刻に食事をする
・ゆっくり食べる(食いはやめましょう)
・体を動かす(1日1万歩以上歩くなど)

運動を続けることによって血糖値が下がるだけではなく、インスリンの働きが回復する、肥満を予防する、体力を増強する、ストレスを解消する、といった効果も期待できます。また、糖尿病や動脈硬化を予防するアディポネクチンを増やす作用も知られています。

糖尿病になったときの治療

糖尿病になってしまった後も食事療法と運動療法が基本です。ただしコントロールが悪い糖尿病や、合併症の進んだ糖尿病の場合は、運動に制限が必要になることもありますので、必ず医療機関を受診して、主治医の先生と相談してからにしてください。
薬物療法には飲み薬と注射薬がありますが、薬の種類は年々増えてきています。主治医の先生が判断して、あなたに合っている薬を処方してくださいます。
そして、治療していく上で一番大事なことは途中で治療を中断しないことです。

日本糖尿病学会が提唱するコントロール目標(2013年6月から適用)

目標 血糖正常化を
目指す際の目標
合併症予防
のための目標
治療強化が
困難な際の目標
HbA1c(%)* 6.0未満 7.0未満 8.0未満

この目標値はひとりひとり異なっていますので、主治医の先生と相談して決めましょう
*HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)については早期発見のところに記載してあります


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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