社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
2020.11.24

コロナ禍だからこそ治療しよう ④肥満

新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが立たない状況が続いています。そんな中でコロナに負けず、日々の生活を安心して健やかに過ごすために、専門医による正しい知識をお伝えする本シリーズ。今回は肥満によるコロナへのリスクについて山形済生病院糖尿病・内分泌内科の間中英夫先生が解説します。

そもそも「肥満」とはどんな状態?

肥満とは太っている状態のことを指します。肥満かどうかをはかる指標としてBMI(Body Mass Index)という指標が使われており、以下の計算式で算出します。日本ではBMIが25以上の場合を肥満と定義しています。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

一般的には、身体を動かすことが少ない人、生活習慣が夜型の人、基礎代謝が低い人、早食いの人などが肥満になりやすいとみられています。

肥満はさらに、「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の2つのタイプに分けられます。内蔵型肥満は男性に多く、胃や肝臓など腹腔内臓器(ふくくうないぞうき)の周囲に脂肪が蓄積する肥満です。臍(へそ)周囲が男性では85cm以上、女性では90cm以上で内蔵型肥満と判定されます。一方、皮下脂肪型肥満は主に皮下組織に脂肪が蓄積する肥満で、お尻や太ももなど下半身の肉づきがよくなり、女性に多くみられます。

後で説明しますが、2つの肥満のうち内臓脂肪型肥満は、新型コロナウイルスの重症化リスクがより高くなる可能性があります。

肥満によって病気になるリスクが高まる

次に、肥満によってどのような病気のリスクが高まるかをみていきましょう。

◆肥満の人は糖尿病になりやすい

肥満になると、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)を下げる働きを持つホルモンであるインスリンのレセプター(受容体)が減少します。そうなるとインスリンを多量に分泌しなければならないのですが、分泌量には限界があります。また、内臓脂肪細胞から分泌されるたんぱく質のサイトカインがインスリンの働きを低下させます。これらの理由から、肥満は血糖値を高め、かつ、インスリンの働きを弱めるので、糖尿病になりやすいのです。

◆肥満の人は高血圧になりやすい

肥満の人は過食によって塩分摂取が増えるほか、インスリンの分泌が増加して腎臓でのナトリウムの再吸収が進みます。血液中のナトリウムを薄めるために血管内を流れる水分量が増え、循環血液量が増加することで血圧が上昇します。また、過剰に分泌されたインスリンにより、末梢血管を収縮させる働きがあるカテコラミンというホルモンが増加し、血圧を上昇させます。脂肪細胞から分泌されるアンギオテンシノーゲンという物質も血管を収縮させる働きを持ち、血圧を上昇させます。

重度の肥満ほど、新型コロナが重症化しやすい

欧米では肥満の人が新型コロナウイルスに感染しやすく、重症化しやすいと報告されています。日本では明らかではありませんが、中国では重症化した患者に肥満の人が多かったようです。

先に挙げたように、肥満の人は糖尿病高血圧などの生活習慣病を合併するケースが増えます。そうなると腎障害や肝障害が起こりやすくなり、さらに肥満が原因で動脈硬化が進行します。動脈硬化症は血管壁に障害がありますが、血管壁に障害があるとウイルスが体内に侵入しやすくなるため、新型コロナウイルスに感染しやすくなります。

また、肥満の人は腹腔内や皮下に脂肪が多く、胸郭が膨らみにくくなっていることから、肺に入る空気の量が少なくなります。肺からの酸素の取り込みが少なくなるので、血液中の酸素濃度も低くなると思われます。

これらの要因により、肥満は新型コロナウイルス感染に対して重症化のリスクがあるといえそうです。

免疫が暴走するサイトカインストーム

先述のサイトカインは、主に免疫系細胞から分泌される情報伝達物質で、免疫反応の増強・制御、細胞の増殖・分化などの調整を行なっています。免疫細胞はウイルスに感染した細胞を攻撃するとき、炎症性サイトカインを放出します。ただ、このサイトカインが過剰に放出され、免疫が暴走して正常な細胞まで攻撃することがあります。これを「サイトカインストーム」と呼びます。

新型コロナウイルスに感染すると、内臓脂肪組織からサイトカインが大量に放出されることでサイトカインストームが起こり、重症化しやすいといわれています。特に内臓脂肪型肥満は、皮下脂肪型肥満に比べてサイトカインストームを起こしやすい傾向があるようです。

コロナ対策と併せて、肥満予防も

ここまで肥満による新型コロナへのリスクをみてきましたが、実際に外出自粛の影響などで、糖尿病患者さんの数値に悪化がみられます。
例えば当院の糖尿病の外来患者さんでは、前年同期よりも体重が1~3kg増加しています。さらに、血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は通常、2月から4月をピークに低下することが多いのですが、今年は低下せず逆に0.1~0.3%上昇している患者さんが多い印象があります。
コロナ禍により運動がしづらい状況ではありますが、今こそ肥満予防にしっかり取り組むことが重要です。

【肥満の予防方法】
・スクワットなどの筋肉トレーニングを毎日一定時間行なう。
・できれば屋外での歩行やジョギングを週3日以上行なう。
・体重を毎日測定する。
・食事では野菜を多くとるようにし、いわゆるジャンクフードは控える。
・果物は100g以上のとりすぎには注意する。


マスクの着用や手洗い・消毒の徹底、「3密」を避けるなど新型コロナウイルス感染症の予防対策を進めながら、適度な運動を行ない食生活に気を付けて、肥満の予防も心がけましょう。

間中 英夫
PROFILE
間中 英夫 山形済生病院 診療顧問

1980年 山形大学医学部卒業
1984年 同大学院修了
1998年 山形大学医学部内科学第三講座助教授
2004年 寒河江市立病院長
2011年 山形県立中央病院副院長
2020年 済生会山形済生病院診療顧問
日本内科学会専門医・指導医、日本糖尿病学会評議員・専門医・指導医、日本内分泌学会功労評議員・専門医・指導医、山形県医師会常任理事

※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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