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2021.12.15
筋膜炎とは、筋肉の使い過ぎによって筋膜(筋肉を覆う薄い膜)が水分を失って硬くなり、柔軟性を失った状態をいいます。
骨格筋(骨を覆う筋肉)は一般に紡錘形(円柱状で中央が太く、両端が次第に細くなる形)をしていて、両端は細長く腱を形作り、関節を挟んで位置する骨にそれぞれ付着しています。この紡錘形の筋は筋膜に覆われており、ブロックとして収縮することで関節の運動を可能にしています。
筋肉の断面
しかし、筋膜炎を生じると筋肉全体が縮んで伸びなくなることで柔軟性を失い、筋膜が膠着(こうちゃく=くっついて離れなくなる)します。この部分は「トリガーポイント」(強く痛みを感じる点)と呼ばれ、筋膜や腱膜の短縮に伴う機能障害によるうずくような痛みを引き起こし、少し離れた場所に痛みを発生させることもあります。
筋肉と骨は筋膜を通じて全身でつながっているため、筋膜炎は身体のさまざまな場所で起こります。特に後頭部、首、肩甲肩関節の周囲、背中や腰、足の裏に痛みが生じやすいです。
筋膜炎を引き起こしやすい部位
筋肉の使い過ぎや、逆に長時間同じ姿勢のまま動かないことによって筋膜が硬くなり、周囲と癒着して炎症を起こすことで痛みを生じます。そのまま無理な運動を続けると、悪化して筋断裂や筋膜断裂などを発症することもまれにあるので注意が必要です。
さらに、骨格筋とその筋膜を中心に、トリガーポイントに起因した痛みが発生する概念として「筋・筋膜性疼痛症候群」があり、腰痛や肩こりの原因の一つと考えられています。
また、足裏の筋膜炎はランナーに多くみられます。
基本的には、痛みがある筋肉を必要以上に使わないようにすることです。体を少しでも安静にして休めて、筋肉の疲労をとることを心がけてください。
炎症が慢性化しないうちに、鎮痛消炎剤の内服、トリガーポイントへのブロック注射なども必要でしょう。指などで圧迫して痛みが出る場所や、硬いしこりとして触れる過敏点(刺激への感受性が高まっている場所)に局所麻酔剤を注入するブロック注射には、筋膜の癒着を改善し、痛みを緩和する効果があります。
長時間同じ姿勢のまま筋肉を動かさないことや、筋肉の使い過ぎが発症の主な原因です。そのような状況が思い当たるときに、痛みがトリガーポイントの部位と一致し、そこに硬いしこりがあり指などで圧迫して痛みがみられる場合には、筋膜炎と診断されます。
同じ状況が長く続くと、症状が慢性化し、筋膜の癒着の範囲が拡大して機能障害が進行するため、治療が難しくなります。
関節のストレッチを常に心がけ、筋肉の柔軟性と筋力を維持していくことが予防の大前提です。その上で、同じ部分に通常以上の負荷を長時間かけないことが重要です。筋力は20~30代がピークで、その後年齢とともに徐々に衰えていくものですが、いかに筋力を維持・強化できるかが大切なことです。常に自分の年齢・筋肉量に応じた運動量を考え、筋肉の使い過ぎに気をつけることが基本です。
解説:五之治 行雄
福井県済生会病院
整形外科主任部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。