済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
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2021.10.06
筋肉の最も重要な役割は、関節を動かすことです。筋肉は2つ以上の骨にまたがって付着しており、その筋肉が伸びたり縮んだり(伸張/収縮)することで、2つの骨のつなぎ目である関節を動かします。
このとき、最も大きな負荷が加わる部位を考えてみてください。電源コードに例えると、柔らかいコード(筋肉)と硬いプラグ(骨)のつなぎ目の部分がよく壊れます。ヒトの身体も同じで、柔らかい筋肉が関節付近で腱に変化して硬い骨にくっつく「腱付着部」に負荷が集中し、障害が起こりやすくなります。
筋腱付着部障害(筋腱付着部症)とは、スポーツ活動などによる高負荷の反復運動や、加齢による変性(経年劣化)が原因で、腱付着部に小さなダメージが蓄積されて疼痛や機能障害が出現した状態です。
筋腱付着部障害はいろいろな部位に発生します。特に好発するのは肘関節外側(上腕骨外側上顆炎、テニス肘)、膝関節(ジャンパー膝、膝蓋腱炎、大腿四頭筋腱炎)、踵(アキレス腱付着部炎、足底腱膜炎)です。
好発部位の筋腱が伸張されるとき、腱付着部に疼痛を生じます。テニス肘では手首や中指を伸展する(反らす)と痛みが生じます。ジャンパー膝やアキレス腱付着部炎では、ランニングやジャンプの動作によって痛みが出現します。足底腱膜炎では起床して1歩目の痛みが特徴的です。原因となる運動をやめて安静にすると症状は軽減しますが、運動を再開すると症状が再燃することが多いです。
腱付着部に狭い範囲で皮膚に圧を加えたときに感じる痛みが認められ、腱の伸張テストを行なうと疼痛が誘発される場合に診断されます。画像検査では、超音波検査が簡便で有用です。腱付着部の骨棘(こつきょく=関節面辺縁の骨がとげのように突出したもの)や石灰化を評価するためのX線検査、腱内部や付着部の骨内部の変化を評価するためのMRI検査を行なうこともあります。
筋腱が伸張されながら収縮する動きをゆっくりと行なう「遠心性収縮運動」や、器具を装着して腱付着部への負荷を軽減する「装具療法」を行ないます。また、飲み薬(消炎鎮痛薬)や外用薬が処方されます。なかなか改善しない場合には、腱付着部への注射療法や体外衝撃波治療、再生医療の一種であるPRP(多血小板血漿)療法を行ないます。ただし、体外衝撃波治療は6カ月以上治療を続けても改善しない難治性足底腱膜炎のみ保険適用となっており、筋腱付着部障害に対する使用は保険外診療となるため、すべての病院で行なえる治療ではない点に注意が必要です。また、PRP療法も保険適用外の治療であるため、行なっている病院は限定されます。
上記の各種保存療法で効果が得られない場合には、手術療法が行なわれることもあります。
発症初期では、動き始めに痛みがあっても、しばらく動いていると痛みが軽減していきます。始めだけ我慢すれば問題なく運動できるけれども、運動後に痛みが出現する、ということも初期には多くみられます。これらの症状がある場合には、早いうちに整形外科を受診することをお勧めします。
筋腱付着部障害の予防にはストレッチが有効です。また、遠心性収縮運動が、筋腱付着部障害の予防・治療として有効であるといわれています。
解説:松井 智裕
奈良病院
整形外科部長
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